著者
田村 類 高橋 弘樹 生塩 孝則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.2, pp.71-82, 2001 (Released:2004-02-20)
参考文献数
31

有機ラセミ結晶の新しい自然光学分割現象を見いだし,これを優先富化現象と命名した.ラセミ結晶が優先富化現象を示すための必要条件を明らかにし,その機構を解明することを目的として,優先富化現象を示す化合物の誘導体や類縁体を合成し,これらの化合物の分子 · 結晶構造と優先富化現象の相関関係,これらのラセミ結晶の形態(ラセミ化合物,ラセミ混合物,ラセミ混晶の別)について系統的な研究を行った.その結果,X線結晶構造解析と融点相図の作成により,優先富化現象を示す化合物のラセミ結晶の形態は,きわめて秩序の高いラセミ化合物型の鏡像体間の混晶,あるいは中程度の秩序を持つ鏡像体間の混晶であることが判明した.一方,優先富化現象を示さない化合物のラセミ結晶の形態は,きわめて秩序の低い鏡像体間の混晶であることが示された.また,溶液中での鏡像体の会合構造を保持したまま結晶化したと考えられる結晶構造を得ることができたので,この構造を基にして,優先富化現象と密接に関連する結晶多形転移の機構を提唱する.

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『 有機ラセミ結晶の新しい自然光学分割現象を見いだし,これを優先富化現象と命名した』田村類「優先富化現象―結晶構造と多形転移―」日本化学会誌 2001(2), 71-82, 2001  https://t.co/neLPYrOHZp

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