著者
羽生 春夫
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.222-226, 2006 (Released:2011-07-05)
参考文献数
7

【要旨】老年期の代表的な認知症といわれるアルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症(DLB)、血管性認知症(VaD)の早期診断と鑑別における画像検査の役割について概説する。MRIは脳の微細構造を含む形態学的変化の描出に優れ、ADの主病変となる海馬や海馬傍回(内嗅野皮質)を明瞭に識別できる。視覚的にも萎縮の評価は可能であるが、voxel-based morphometryによって客観的な形態学的変化の評価が容易となってきた。最近登場したVSRADという解析ソフトを用いると、早期ADやMCI患者で内嗅野皮質を含む側頭葉内側部の萎縮が検出でき、その他の認知症と比べてより高度な萎縮を確認できることからADの早期診断や鑑別に期待される。SPECT画像を3D-SSPなどから統計学的に解析すると、ADの病初期やMCIのrapid converter群では後部帯状回や楔前部の有意な血流低下が認められ、早期診断に活用できる。また、DLBでは後頭葉内側の血流低下が、VaDでは前頭葉や帯状回前部の血流低下がみられるなど、それぞれ特徴的な脳血流低下パターンを示すことから鑑別診断にも役立つ。形態画像や機能画像の統計学的解析によって、ADを代表とした認知症の早期診断や鑑別がいっそう容易となり、今後の薬物治療にも大きな貢献をもたらすものと期待される。

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MCIで健忘型は海馬の萎縮も著明でアルツハイマーへ移行しやすい。 https://t.co/2wMYn4gRat

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