著者
守口 善也
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.262-268, 2007 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20

【要旨】自己の情動の同定・表象困難であるアレキシサイミア群(ALEX:n=16)とコントロール群(NALEX:n=14)を対象に、他者理解に関わる課題(心の理論、痛みに対する共感、ミラーニューロン)を用いて脳機能画像研究を行った。心の理論に関わる課題においては、アニメーションの三角形の意図のくみ取りのスコアがALEX群の方が有意に低く、内側前頭前野の賦活低下がみられた。さらにこの部位の脳活動は視点取得能力と正の関係を認めた。ミラーニューロン課題においては、前運動野、あるいは頭頂葉をはじめとする領域が、ALEXではむしろより賦活しており、その脳活動は視点取得能力とは負の相関を示していた。他者の痛み画像に対する認知的評価の課題に関しては、ALEXは、痛みを低く評価しており、pain matrixの中でも、前帯状回、背外側前頭前野などのより認知的で実行的な情動処理の領域における機能低下が認められた。自己/他者の心を表象することは、自分とは一端離れた視点を持つ必要がある点は共通しており、ALEXにおける自己の客体化(メタ認知)の障害が示唆された。さらに、認知的な、とりわけ実行機能・感情の制御など、神経学的にも種々の他者の認知障害の関与が示唆された。このことは、自己・他者の理解の障害は相互に密接に関係していることを示しており、その共通項は心身症や精神障害にも重要な意味を持っていると考えられた。

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