著者
守口 善也
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.34-42, 2011 (Released:2017-04-12)

アレキシサイミア(失感情症)とは、自己の感情の同定や表象の困難という情動処理の不全に関する性格傾向で、心身症などの疾患で重要とされる。その脳機能の研究は重要であるが、体型的なまとめはなかった。ここでは、従来のアレキシサイミアに関わる脳機能画像研究をレビューした。その結果、1)外的な情動(視覚)刺激、及び想像性に対する辺縁系・傍辺縁系(扁桃体、島皮質、前帯状回、後帯状回)の反応性は低下しており、2)内的な体性感覚・運動などの「身体」にまつわる刺激に対しては、島皮質や感覚運動領域をはじめとして、むしろ亢進している。3)社会性の課題に対しては、内側前頭前野・島皮質等において活動が低下していた。アレキシサイミアがもつ「外的な情動刺激への鈍麻」と、一方で「より内的でダイレクトな「身体」感覚への過敏」という脳機能の特性は、アレキシサイミアの人の一部が身体症状に依存することにつながっていると思われる。
著者
可知 悠子 前田 基成 笹井 惠子 後藤 直子 守口 善也 庄子 雅保 廣山 夏生 瀧井 正人 石川 俊男 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.215-222, 2006-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
27
被引用文献数
4

本研究の目的は, 摂食障害とアレキシサイミア傾向の関連を, 健康な対照群との比較から検討することである.68名の摂食障害女性患者〔神経性食欲不振症制限型(AN-R)28名, 神経性食欲不振症むちゃ食い/排出型(AN-BP)25名, および神経性過食症排出型(BN-P)15名〕と236名の女子学生を対象に, 日本語版Toronto Alexithymia Scale-20 (TAS-20)ならびに日本語版Eating Attitude Test-26 (EAT-26)を用いて自己記入式質問紙による調査を施行した.その結果, 摂食障害患者においては病型に関係なくアレキシサイミア傾向が強いことが明らかになった.また, TAS-20の下位尺度である"感情の同定困難"と摂食障害の症状の重症度との間に関連が認められた.以上により, 摂食障害患者の治療においては, アレキシサイミアを考慮したアプローチが重要あることが示唆された.
著者
守口 善也
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.10-16, 2011-02-10 (Released:2011-05-10)
参考文献数
24
著者
守口 善也
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.262-268, 2007 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20

【要旨】自己の情動の同定・表象困難であるアレキシサイミア群(ALEX:n=16)とコントロール群(NALEX:n=14)を対象に、他者理解に関わる課題(心の理論、痛みに対する共感、ミラーニューロン)を用いて脳機能画像研究を行った。心の理論に関わる課題においては、アニメーションの三角形の意図のくみ取りのスコアがALEX群の方が有意に低く、内側前頭前野の賦活低下がみられた。さらにこの部位の脳活動は視点取得能力と正の関係を認めた。ミラーニューロン課題においては、前運動野、あるいは頭頂葉をはじめとする領域が、ALEXではむしろより賦活しており、その脳活動は視点取得能力とは負の相関を示していた。他者の痛み画像に対する認知的評価の課題に関しては、ALEXは、痛みを低く評価しており、pain matrixの中でも、前帯状回、背外側前頭前野などのより認知的で実行的な情動処理の領域における機能低下が認められた。自己/他者の心を表象することは、自分とは一端離れた視点を持つ必要がある点は共通しており、ALEXにおける自己の客体化(メタ認知)の障害が示唆された。さらに、認知的な、とりわけ実行機能・感情の制御など、神経学的にも種々の他者の認知障害の関与が示唆された。このことは、自己・他者の理解の障害は相互に密接に関係していることを示しており、その共通項は心身症や精神障害にも重要な意味を持っていると考えられた。