著者
新原 立子 米沢 大造
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.522-527, 1981-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

1. 脂肪酸とモノグリセリドは小麦デンプン糊化時の膨潤を抑制したが,高温(95℃)に加熱すると膨潤抑制効果は消失した。卵黄レシチンは膨潤をいくぶん促進し,綿実油は添加効果がほとんど認められなかった。2. 小麦粉にオレイン酸を添加すると,小麦デンプンの場合と異なり,高温糊化時の膨潤が抑制された。この現象は食塩の存在でさらに顕著に認められた。3. 脱脂小麦粉の稀食塩水抽出液中でオレイン酸を含む小麦デンプンを糊化させると,高温においても膨潤抑制効果が認められた。4. 小麦粉稀食塩水可溶物質のひとつとして,タンパク質の寄与を調べるために,牛血清アルブミン,同α-グロブリン,小麦グルテンを小麦デンプン・脂肪酸系に添加して高温糊化時の膨潤性を調べたところ,食塩水中でのグルテンの添加を除き,いずれも添加効果が認められた。とくに食塩共存下の牛血清α-グロブリンの寄与は大きく,微量の存在で効果が認められた。5. このような,脂肪酸存在下でおこる小麦デンプンの膨潤抑制に対するタンパク質の寄与は単なるpH調節作用とは考えられない。以上より,小麦粉は脂肪酸と食塩の共存により高温糊化時もデンプンの膨潤はおさえられるが,それは小麦粉中のタンパク質の寄与によるものであることを結論した。そして脂肪酸,タンパク質,食塩の存在によるデンプンの膨潤性の低下が,厄後の手延素麺におけるゆで麺の膨潤性の低下の一因であることを指摘した。

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