- 著者
-
大浦 宏邦
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.2, pp.133-152, 2003-09-30 (Released:2009-01-20)
- 参考文献数
- 35
- 被引用文献数
-
3
本論文では、秩序問題へ進化ゲーム理論的にアプローチする方策について考察する。 人間社会で観察される秩序現象はゲーム理論的には、調整ゲーム型の秩序現象、チキンゲーム型の秩序現象、社会的ジレンマ回避型の秩序現象の3つに大別することができる。このうち、もっとも解決が困難なのは、社会的ジレンマ回避型の秩序現象である。 社会的ジレンマ回避については、二人囚人のジレンマゲームで協力状態をもたらす究極要因や、N人囚人のジレンマゲーム(NPD)で協力状態をもたらす至近要因についての研究はすすんでいるが、これらの至近要因の進化を可能にする究極要因についての研究は不十分である。本論文では、従来の進化ゲーム理論を拡張したn人選択的相互作用型の進化ゲームモデルの開発によって、NPD回避の究極要因を明らかにできる可能性があることを紹介する。 このような進化ゲーム理論的アプローチは、秩序問題について従来提案されてきた規範解やゲーム論解の不十分な点を補うことができると期待できる。