- 著者
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安田 憲司
- 出版者
- 公益社団法人 応用物理学会
- 雑誌
- 応用物理 (ISSN:03698009)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, no.12, pp.750-754, 2022-12-01 (Released:2022-12-01)
- 参考文献数
- 29
分極の方向を電場によって制御可能な強誘電体は,情報の保持が可能な不揮発性メモリとして機能する.不揮発性メモリの微細化のうえでは,強誘電体の薄膜化が重要であるが,従来の強誘電体では薄膜化が困難であり,物質科学的にこの問題を解決する必要があった.この問題に対し我々は,ファンデルワールス積層構造と呼ばれる構造を作製することで人工的に2次元強誘電体を作り出した.もともと強誘電性を持たない層状ファンデルワールス化合物である窒化ホウ素に対して,積層構造を人工的に変えることで強誘電体へと変化させることに成功した.得られた強誘電体はナノメートル以下の厚さにもかかわらず室温まで安定であり,これを用いて我々は不揮発性強誘電体トランジスタを実現した.さらに我々は半導体遷移金属ダイカルコゲナイドを同様に強誘電体へと変換することで,本設計指針の汎用(はんよう)性を実証した.