著者
高野 了太 野村 理朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-013, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

畏敬は,現在の認知的枠組みを更新するような広大な刺激に対する感情反応と定義される。先行研究では,自己をちっぽけに知覚することが畏敬の心理プロセスの重要な側面を担うというスモール・セルフ仮説が提示されてきた。この仮説は認識される自己に焦点を当てており,次に明らかにすべきは経験の主体としての自己に対する畏敬の効果である。そこで本研究はラバーハンド錯覚に着眼し,畏敬が身体所有感に及ぼす影響について検討した。ラバーハンド錯覚では,隠された自分の手と眼前のゴムの手を同時に撫でられることで,ゴムの手を自分のものと錯覚する。先行研究では,この錯覚傾向が自己主体感の脆弱な統合失調パーソナリティ傾向と正の相関関係にあること,加えて畏敬が出来事の原因を「超自然的な何か」への帰属傾向を高めることが示されている。そこで本研究では畏敬がラバーハンド錯覚を促す可能性について検討し,畏敬がゴムの手に対する身体所有感を高め,畏敬によりスモール・セルフを感じた個人ほどこの傾向が顕著となることを示した。これらの発見は,畏敬が自己をちっぽけに感じさせるよりむしろ,自己を「手放す」プロセスを有することを示唆する。

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