- 著者
-
高野 了太
澤田 和輝
野村 理朗
- 出版者
- 公益社団法人 日本心理学会
- 雑誌
- 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
- 巻号頁・発行日
- pp.PC-054, 2021 (Released:2022-03-30)
畏敬は,現在の認知的な枠組みが更新するような広大な刺激に対する感情反応である。従来,雄大な自然等の刺激から生じる畏敬が自己主体感を低下させ,目の前の超越的な出来事を説明するための新たな意味体系(神等)を見出すよう動機づけること等が指摘されている。これらの知見は,畏敬が「人は行いにふさわしい成果をこの世界で与えられる」という公正世界信念(Belief in a just world,以下BJWとする)と関わる可能性を示唆する。BJWは対象を自己としたBJW-自己と,他者としたBJW-他者の2種からなり,例えば,BJW-自己は,自分の運命をコントロールする点から自己主体感と正に関わる一方,BJW-他者は,世界に意味体系をもたらす点から宗教的信仰心と正に関わることが示されている。ゆえに本研究では,日常的に畏敬を経験する傾向(気質畏敬)とBJW-自己・他者の関連を検討した。結果,他のポジティブ感情の効果を統制した際,気質畏敬は,BJW-自己を負に,BJW-他者を正に特異的に予測した。これらの結果は,畏敬が,自他の対象によって異なる形で,世界を理解するための枠組みとしての信念と関わることを示唆する。