- 著者
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宮原 克典
- 出版者
- 一般社団法人 人工知能学会
- 雑誌
- 人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
- 巻号頁・発行日
- pp.1K5OS11b04, 2023 (Released:2023-07-10)
2022年6月、Googleのエンジニアが、大規模言語モデルLaMDAには意識があり、一人の主体として扱われるべきだと主張した。Google社は主張を退け、多くの論客がそれに賛同した。大規模言語モデル(LLM)への主体性の帰属を否定する理由は、いくつかある。(1)LLMの内在的特性に関わる理由:LLMは意識も意図ももちえない。(2)LLMへの主体性の帰属の帰結に関わる理由:LLMを主体として扱うことは、より重要な問題から社会の注意や関心を逸らせる。(3)個人のウェルビーイングに関わる理由:LLMを主体として扱うことは、本人の社会的孤立につながりうる。本発表では、これらの理由を検討し、LLMを主体として扱うべきではないと断言するのが意外に難しいことを示す。また、ロボットの道徳的地位やフィクトフィリア(架空の存在への性愛)をめぐる議論を引きながら、LLMへの主体性帰属の正当性を判断するためのポイントを整理する。