著者
川端 浩
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1105-1111, 2020 (Released:2020-11-06)
参考文献数
34

炎症は非特異的な生体防御反応であるが,これが長期にわたると貧血を生じる。その発症には免疫細胞から放出されるさまざまな液性因子が関与する。腫瘍壊死因子α(TNFα)は造血幹細胞を白血球系に分化させる転写因子PU.1を増加させ,赤芽球系への分化を促す転写因子GATA-1の発現を低下させる。TNFαとインターロイキン1β(IL-1β)は腎臓におけるエリスロポエチン産生を低下させ,インターフェロンγは造血前駆細胞におけるエリスロポエチン受容体の発現を低下させる。IL-6は肝臓におけるヘプシジン産生を増加させ,これが鉄のリサイクル・システムを阻害して造血系における鉄の利用障害を引き起こす。マクロファージの活性化により赤血球の寿命も短縮する。治療としては原疾患の改善が最も重要であるが,慢性腎臓病合併例では赤血球造血刺激薬が用いられ,関節リウマチ例などではヘプシジンの経路を抑制する抗IL-6受容体抗体も用いられる。

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炎症性貧血。 TNF-α が造血幹細胞を白血球系へ分化させ、赤芽球系にさせない。 IL-6がへプチジン放出を促して鉄代謝をシャットダウン。 IL-1β と TNF-α はエリスロポエチン(赤血球の産生を促進する因子)をシャットダウン。 これつまり、「免疫」が引き起こす貧血なのです

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