著者
岸田 治 西村 欣也
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.40-47, 2007-03-31 (Released:2016-09-10)
参考文献数
45
被引用文献数
1

多くの動物は、捕食者に出会うと逃げたり隠れたりするが、形さえも変化させ捕食を回避しようとするものもいる。形態の変化による防御戦略は誘導防御形態戦略とよばれ、多様な生物分類群でみられる表現型可塑性として知られる。最近の研究では、捕食者動物は、ただ捕食されにくい形に変わるだけでなく、その変化が柔軟であり、捕食者環境の時間的・空間的な変異によく対応していることが知られている。本稿では、エゾアカガエルのオタマジャクシの捕食者誘導形態の防御機能と、柔軟な形態変化能について紹介する。エゾアカガエルのオタマジャクシは、捕食者のエゾサンショウウオの幼生とオオルリボシヤンマのヤゴに対して、それぞれに特異的な形態を発現する。サンショウウオ幼生によって誘導された膨満型の形態はサンショウウオ幼生による丸のみを妨げ、ヤゴによって誘導された高尾型の形態はヤゴによる捕食を回避するために有効である。これらの形態変化は柔軟性に富んでおり、一度、どちらかの捕食者に対して特異的な防御形態を発現した後でも、捕食者が交替したときには、新たな捕食者に特異的な防御形態へ変化できる。また、捕食の危険が取り除かれたときは元の形態へと戻る。捕食者特異的な形態の互換性は、捕食者種に特異的な防御形態誘導を獲得するうえで重要な役割を果たしたと考えられる。また、形態変化の可逆性は防御にコストがかかることを示唆している。これらの形態変化の時間的な可変性に加えて、オタマジャクシは危険の強度に応じた調整的な防御形態発現を示す。このことはオタマジャクシが捕食強度に応じて費用対効果を最大化するように防御を発現している可能性を示唆している。

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天敵の存在が個体の変異を促進するケースはある種のカエルとかで知られてるので、ハンターとの度重なる交戦が脱皮の引き金となるホルモンの分泌を促進した…とかあるのかもしれない https://t.co/edSZGbpJ9k

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