著者
今井 聖
出版者
日本社会病理学会
雑誌
現代の社会病理 (ISSN:1342470X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.81-96, 2020 (Released:2021-11-01)
参考文献数
13

本稿では、(1)「大津 いじめ事件」の報道を分析し、個別の事件の展開過程においても〈新たな概念〉の下での過去の再構成が起こり得ることを示し、(2) そのような事態がいじめの事実認定の実践にいかに影響するのかを、同級生の証言に基づいて明らかにする。「大津いじめ事件」に関する先行研究では、伝聞情報として確認されていたはずの「自殺の練習」がいかにして「問題」とされ、その「自殺の練習」の事実認定がいかに帰結したのかが十分に検証されていなかった。本稿では、テレビニュース場面の理解可能性に基づき、「重要な証言」としての「自殺の練習」情報の使用が「隠蔽」問題の構築につながったことを示す。その上で、Ian Hacking の議論を参照しながら、「自殺の練習」報道が、同級生たちにとって〈新たな概念〉の下での過去の再構成が可能な状況をもたらすものであったことを述べ、メディア報道と事実認定の実践との関係を捉えるための新たな視点を提示する。

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Ian Hacking逝去の報を目にして。 ハッキングの議論を参照したこの論文、ハッキングが提示した視角に重なる議論だと言えるかどうか、今でもすこし心許ないが、 「いじめ自殺」事件における過去の再構成」『現代の社会病理』 https://t.co/mybz98wvJ7
おもしろかった。勉強になる https://t.co/HIw8SjGd15

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