著者
松浦 優
出版者
西日本社会学会
雑誌
西日本社会学会年報 (ISSN:1348155X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.89-101, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
41

近年の英語圏におけるアセクシュアル研究では、正常な人間ならば他者へ性的に惹かれるのが当然だという思い込みを批判する概念として、「セクシュアルノーマティヴィティ(sexualnormativity)」という概念が提起されている。しかし現在の日本ではアセクシュアルに関する研究はまだ少ないため、はじめにセクシュアルノーマティヴィティに関する英語圏の先行研究を整理する。次にセクシュアルノーマティヴィティ概念の導入によって、セクシュアリティに関する理論的枠組みの改訂を試みる。具体的には、性をめぐる近代的な力学を「権力関係を含んだ性別二元制」と「セクシュアルノーマティヴィティ」を両輪として構成されているものとして捉え、ヘテロノーマティヴィティをこの力学の内部で析出される現象と位置づける。また、セクシュアリティという概念装置が、女性の経験だけでなく、性交渉へと結びつかないセクシュアリティをも「抹消」してきたことを指摘し、後者の「抹消」を「性欲の性交欲化」と名付ける。これによって、セクシュアリティと親密性との間の癒着をより適切に理論化できると考えられる。最後に、セクシュアルノーマティヴィティ概念が新たな研究領域を切り開く可能性について、〈オタク〉研究を事例に検討する。

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最近論文で面白かったのはこれ アセクシュアル研究もだし、なんというかセクシュアリティを「対人間との愛/関係」に終始させるなという意識がとても新鮮。「関係性」ばかりに目標がいってた自分やまわりのひとの考えが、良い意味で相対化される経験 https://t.co/lQSzzr789X
https://t.co/VzgM5WlALo >>「性欲とは性交欲である」という暗黙の前提が持ち込まれ ることによって、性に関する欲望の複雑さが抹消されることになる。このような抹消によって、「セク シュアリティの装置」が「性的に結ばれた相手という関係に接合される」ものとして前景化されるの である。 面白い https://t.co/mpin2ihQ6T
J-STAGE Articles - アセクシュアル研究におけるセクシュアルノーマティヴィティ(Sexualnormativity)概念の理論的意義と日本社会への適用可能性 https://t.co/X0i3Ypzdjh
セクシュアルノーマティヴィティ概念をめぐっては、松浦優(2020)「アセクシュアル研究におけるセクシュアルノーマティヴィティ(Sexualnormativity)概念の理論的意義と日本社会への適用可能性」が非常に勉強になりました。 https://t.co/7y4HNsS0St
アセクシュアル研究におけるセクシュアルノーマティヴィティ概念の理論的意義と日本社会への適用可能性 https://t.co/3aJSUwnShD
ほーう https://t.co/knp9CnIyvk

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