著者
松井 達也
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.127-136, 2013 (Released:2017-05-10)

本研究の目的は近年の国内におけるホームレスの健康調査とアルコール問題に関する文献検討を行い,その現状を明らかにすることである。ホームレスに関連する調査資料を含む国内文献31編の文献検討を行った結果,全国調査10編,大阪市内の調査9編,他の地域の調査6編,支援報告6編であった。ホームレスの全国調査において路上生活者はこの10年間で1万5千人ほど減少している一方で,路上生活を脱した,脱ホームレスのうち精神障がいの疑いがある者15.2%,アルコール依存症の疑いがある者14.1%となっており,孤立を解消するための伴走型の支援が求められていた。大阪のあいりん地区や東京の山谷地区では高齢化が進み,ほぼ全員が単身男性,家族との関係が絶縁または希薄,若年発症と思われる人が多く,生活障害が顕著であるため,服薬や金銭管理などきめ細やかな関わりが求められていた。アルコール症患者に対しては毎日の生活リズムを重視したハードな治療プログラムが必要であったが,治療導入においては信頼関係をいかに築くかが重要であり,受容的に人間としての患者の尊厳に気を配ることが何よりも大切であった。

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