著者
福岡 珠美 西山 円
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.111-122, 2018 (Released:2018-04-02)
参考文献数
13

成人看護学では,講義・演習や実践実習でヒューマン・ケアに重点を置き教授し,パンフレットを学生に作成をさせているが生活体験が少ない学生が実習中に患者を理解し個別性に応じたパンフレット作成には苦悩があると考えられる。しかし学生は患者のために何かできないかと考えて退院指導や運動指導や治療意欲を高める目的や入院生活に活気が出るよう考え,何回も作り直して手作りパンフレットを作成している。そのパンフレットは患者さんの趣味を取り入れたり,患者の顔を書いたり,イラストを入れたりして個性豊かな物で世界に1つしかない工夫を凝らした手作りパンフレットになっている。そしてそれを患者や患者の家族に説明し渡す時に,感謝の言葉を受けることで,「この患者さんのために役に立つことができた」と言う学生の成功体験となり自己効力感が高まり,実践実習の一場面ではあるが自己有用感が高められ教育効果に繋がったと考えられた。
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-40, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
9

ミュンヘン一揆によってヒトラーは国家反逆罪による実刑判決を受けた。ナチ党は裁判所から解党処分を言い渡される。当時のニューヨークタイムズはナチ党が解党処分になったことにより,すでにドイツ全土で著名となっていたヒトラーが今後,活動することはないであろうと報じるほどであった。しかし,ヒトラーは服役中にナチ党を再建するための構想を著した『わが闘争』を口述筆記により完成させたのである。出所後,ナチ党の解党処分が解かれたのと同時にヒトラーはナチ党を一から立て直すことに着手,成功する。そして,完全にドイツ国民を扇動することになる。これはヒトラーの手腕と共に国民啓蒙宣伝省の担当大臣を務めたヨーゼフ・ゲッベルスがラジオ,新聞,映画等のメディアと特異な街頭演説の一つである「早朝プロパガンダ」そして「夜間の松明行進」等,斬新なプロパガンダを導入し功を奏した結果であると言っても過言ではない。人の能力を正確に見ぬくヒトラーの眼識がゲッベルス流のプロパガンダを開花させ,ナチ党を国会での第一政党に,さらにはヒトラーを首相・総統にまで押し上げたのである。
著者
中井 正弘
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.257-260, 2013

明治5年から同21年まで大阪造幣寮(現・造幣局)の御雇外国人技師として在日したウイリアム・ガウランド(1842〜1922)は,日本古墳研究のさきがけ者として,その功績は有名である。彼の撮影した大山古墳(仁徳陵)および石津ヶ丘古墳(履中陵)の写真2枚およびこれまでの研究・調査成果をふまえて,明治5年暴風雨により前方部中腹にて露出した石室・石棺がその場で単に埋め戻されたのでなく,墳頂に移設された可能性が高いことを明らかにし,非公開になっている陵墓の古墳研究の一助としたい。
著者
瀬川 滋
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.243-254, 2010 (Released:2017-05-10)

国産コンピュータメーカーでコンピュータを使う立場で事業に携わってきた経験を元に、コンピュータ黎明期から今日に至るまでの我が国のコンピュータの歴史を、使う者の立場から俯瞰し、最後にはコンピュータの今後について思うところを記している。
著者
錦織 史子 新田 弘子
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.93-100, 2018 (Released:2018-04-02)
参考文献数
12

近年,看護学生には様々な心理的問題が指摘されている。そこで今回の研究目的は第1に看護学生の性格特性を調査する事を目的とした。第2に「情緒不安定」や「社会的不適応」の性格特性を持つ看護学生はどのようなレジリエンス因子に影響しているのかを,資質的,獲得的レジリエンス要因の両方から検討した。結果,近年の看護学生は概ね社交的だが,3割以上の学生は「情緒不安定」や「社会的不適応」の性格特性であることが分かった。そのような学生は遺伝的にも環境的にも総じてレジリエンスが弱く,精神の健康障がいを引き起こしやすいことが推測された。 今回の結果から,レジリエンスを高め,健康的に学校生活を送るためには,どのような教育が必要なのか手がかりを得ることが出来た。
著者
黒川 正剛
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-77, 2008 (Released:2017-05-10)

The studies that regard the witch-hunt as sacrifice are many. R Girard's theory which regards the witch as scapegoat is the most famous among them. But it is difficult to say that the problems of sacrifice and scapegoat in the witch-hunt have been researched in detail. The purpose of this paper is to examine the problems of the witch-hunt as sacrifice again, and to show, if the witch-hunt is sacrifice, what the characteristic of this sacrifice is. After morphological analysis on the Pappenheimer's witch-hunt in Bavaria (1600), we examine the use of the word "sacrifice" in Jean Bodin's De la demonomanie des sorciers (1580). We arrive at the conclusion that the witch-hunt is the sacrifice certainly, that is "the inner sacrifice", and this sacrifice has the element of "eros".
著者
黒木 雅美
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.87-91, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
3

精神看護は癲狂院という独自の環境の中で発展し,時代に翻弄され,社会的な背景が色濃く関連している。そして、精神障がい者における処遇は、歴史的に繰り返され,国としての施策の結果,明治期における医療体制の改革として西洋文化を取入れたことにより始まった。精神看護においてもその萌芽が目覚め始め,精神障がい者に対する看護が息吹をあげ始めた。また,「相馬事件」を契機に,全国的に統一した「精神病者監護法」が成立し,精神病者への治安維持的要素が強まるなか,精神看護教育が始まったことで,精神病者に対する人道的な関わりが始まったものと考えられる。
著者
髙橋 紀穂
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.111-120, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
28

本稿の目的はバタイユ理論における「自然」の意味を把握することにある。議論は次のようになされる。最初に,バタイユが自身の議論の基底に「自然」を置いていること,また,その「自然」の意味づけが変化しているという観点を示す(第1節)。次に,1927年頃に書かれたと思われる最初期のエッセイ「太陽肛門」において描き出されている「自然」を明らかにする(第2節)。続いて,雑誌「ドキュマン」においてバタイユが発表した論考から彼の「自然」概念の変化を考える(第3節)。次に,「社会批評」に1932年に発表された論文「ヘーゲル弁証法への基底への批判」における「自然」概念の展開を見る(第4節)。われわれはこれらの探求によりバタイユの考える「自然」が詩的・文学的なイメージを超え,ひとつの政治哲学的思想を支える基礎にまで展開されていることを示す。最後に,これらの探求を踏まえた上での今後必要となる研究に触れる(第5節)。
著者
高井 範子 岡野 孝治
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-73, 2009 (Released:2017-05-10)
被引用文献数
1

本研究では,大学生および成人が,「男らしさ」や「女らしさ」をどのように考えているのか,また,「異性に求めることは何か」を質問紙の自由記述欄において尋ねたものをまとめた。その結果,「男らしさ」としては,包容力,頼りがい,たくましさ・強さ,決断力・判断力,行動力・積極性,リーダーシップなどが,「女らしさ」としては,上品,気遣い・繊細さ,家庭的,かわいさ,愛嬌,色気,美しさといった内容が上位にあがっていた。これらの多くは,従来から示されているものとほぼ同様であり,男性性,女性性に関するジェンダー意識に余り変化がみられなかった。また,「男らしさ」「女らしさ」に共通してみられた内容としては,優しさ,包容力,忍耐強さ,誠実さなどがあげられる。さらに,異性に求めるものとしては,男女共に優しさが最も多かった。次いで,男性が女性に求めることとして,癒し・安心感,ルックスのよさや,自分にないものをもっている,話が合う,従順さや気が利くことなどが上位にあがっていた。一方,女性が男性に求めることとして,包容力,経済力,頼りがい,楽しさ・ユーモア,誠実さなどが上位にあがっていた。
著者
村田 史之
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.133-138, 2019 (Released:2019-06-04)
参考文献数
11

2018年に多数発出された高等教育関係の文書から,「今後の高等教育の将来像の提示に向けた 中間まとめ」と「2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申) 」を取り上げ,文書の構造,内容,テキストマイニングを用いた分析と比較を予察的に実施した。
著者
中井 正弘
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.179-186, 2018

今回,新たに知見できた江戸時代延享期の大山古墳(仁徳陵)の絵図を詳細に検討すると,現状の姿や復元模型などとは異なっている。江戸時代の新田開発策によって周濠と堤がかなり耕地化され,外観に大きな変化が見られる。しかし,よく検討すると築造時の周濠と堤の原型を知ることができる。築造時の復元をするには,各時代の政治や政策による変形の検証が大事になってくる。そのための研究に役立てたい。また,行政を中心に進められている百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録運動の問題点にも論及したい。
著者
雜賀 亮一
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.127-138, 2010 (Released:2017-05-10)
被引用文献数
3

野球は,「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的としている。正式試合が終わったとき,本規則によって記録した得点の多い方が,その試合の勝者となるである」(公認野球規則,2009) 基本的には,1回から9回の間で相手チームよりたくさん得点し,勝つことを目的としておこなわれるスポーツであり,サッカーやラグビー等のように時間に制約されることなく,同じ条件で攻守が与えられる。本研究では,時間に制約されることのない野球において,先制点が試合の勝利に優位を示すかを調べた。先制点をあげたチームの勝率から,先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析すると共に,勝つために望ましいゲーム展開を考えた。結果,先制点をあげたチームの勝率が高く,先に得点することが勝敗に影響を及ぼすことが判った。結果をもとに勝つために望ましいゲーム展開を考えると,前半(1回〜3回)に全神経を集中させ,この間に先制点をあげる為の攻守の戦術をいの一番に考え,明確にして試合に臨むことが重要であるといえる。
著者
小石 真子
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.225-231, 2009
被引用文献数
1

インフォーマルな高齢者サロンの実態を把握し,サロンの役割とサロンの継続に関連する要因を検討した。1.インフォーマル高齢者サロンは,自主的な取り組みで,参加者の楽しみとなっていた。また,参加者同士の交流会で,個人の生活力を高めていた。2.参加者の共通性は,サロンの発起人とゆかりがあること,絵手紙や手芸の制作に関心があることであった。3.サロンの継続のための条件は,余暇時間があること,家計が安定していること,日常生活動作が自立していること,そして,本人および家族による健康管理ができていることであった。
著者
雜賀 亮一
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.157-163, 2011 (Released:2017-05-10)

第92回全国高等学校野球選手権大会(以下,第92回全国大会とする)において先制点をあげたチームの勝率から先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析した結果,先制点をあげたチームの勝率が高く,先制点をあげることが勝敗に影響を及ぼすことが判かった。第92回全国大会においては,先制点が勝利に結びつく割合が,第92回地方大会よりも大きく,改めて先制点の重要性を認識することとなった。全国大会における試合は,先制点をあげることで80%以上の勝率が得られる。先攻後攻においては,1回戦〜準々決勝以前の試合は後攻を,準々決勝以降の試合は先攻を選ぶ。前半(1回〜3回)で先制点を得点することがポイントとなるが,地方大会に比べ,初回における先制点のウエイトが小さくなっており,中盤(4回〜6回)までの粘りが必要となり,地方大会に比べ接戦になる試合が多いと言える。野球は「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的としている。正式試合が終わったとき,本規則によって記録した得点の多い方が,その試合の勝者となるである」(公認野球規則,2009) ことから,早い段階から得点を重ねていくことが重要である。
著者
森田 婦美子 山本 純子 高橋 弘枝
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.149-154, 2012 (Released:2017-05-10)
被引用文献数
2

口腔ケアは歯科疾患の予防を目的にしたものから,嚥下,構音,審美など広義の口腔ケアの目的が重視されるようになってきた。今回,口腔ケアとして,口腔へのブラシ刺激が,脳血流にどのように影響するのか前頭前野における脳血流の測定をおこなった。すべての研究協力者において上顎硬口蓋のブラッシング時,oxyHbの脳血流量が多く観察された。次いで舌,上顎中側切歯根部の順であった。目視解析においては,左眼窩前頭前野や頭頂葉の前運動領野からのoxyHb血流量増加を認めた。上顎硬口蓋への刺激は舌,上顎中側切歯根部に比較して優位に血流量が増加しており,これらのことから,日常のケアにブラシ刺激を取り入れることで,脳の活性が期待できると考える。
著者
古谷 昭雄 山口 眞由
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.151-156, 2007-03-31 (Released:2017-05-10)

毛髪は法医学上、個人識別を行う基本的事項としてきわめて重要である。今回は毛髪の物理学的性状について引張強度と伸張率について年齢群別正常標準値の算出を行った。引張強度については、正常標準値の結果から10歳-19歳の年齢群を最高値に、以後の年齢群については加齢にともなって漸減の傾向がみられ、60歳以上では最低値を示した。男女とも幼年期には弱いが、少年期、青年期に強く、壮年期、老年期に近づくにつれて次第に弱くなっていった。伸張率については正常標準値の結果から10歳未満から加齢にともなって増大し、60歳以上では最高値を示した。加齢とともに少しずつ増大し、60歳以上で最高値を示したことは加齢が進むにつれて水分の吸収がよくなり、しなやかで弾力性がよくなってくるのではないかと推測される。今回の引張試験により個人識別が容易にできる可能性がある示唆をあたえてくれた。
著者
寺田 治史
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.273-283, 2011 (Released:2017-05-10)

幸福度世界一のデンマ-クと同90位の日本(2006年.英レスタ-大学ホワイト教授調べ)。この違いはどこから来るのか。5度に亘るデンマ-ク訪問の結果、その底流に両国における教育の歴史に違いを見出す事が出来る。知と情と意を統合した"対話中心の教育"(筆者はこれを人間教育と称する)を貫くデンマ-クに対して日本の教育は、知育に偏しているように思われる。デンマ-クにおける調査、聞き取り、視察を通して考察した内容を提示し、わが国における今後の議論の糧となれば幸いである。
著者
瀬川 滋
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.125-132, 2015

今から約40年前にローマクラブから,人口,工業化,汚染,資源等の成長率がそれまでの状態が続くなら,100年以内に地球は破綻するということが報告され,世に大きな反響をもたらしたが,これを我が国の資源の観点から検証している。我が国が経済的権益を有する海域には,石油・天然ガス,海底熱水鉱床,コバルトリッチ・クラスト,メタンハイドレード等資源が眠っており,将来の実用化が期待されている。その実現には時間がかかりそうだが,それまでの間は太陽熱,地熱,燃料電池等の活用と,今まで見捨てられていた都市鉱山,バイオマス発電,CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)等の利用を図れば破綻は当分考えられそうもない。
著者
尾上 孝利 米山 明希 勝丸 博信 足立 裕亮
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-186, 2015 (Released:2017-05-10)

スタンダードプリコーションが適切に実施されていると院内感染を防止できるはずである。しかし,微生物が肉眼で見えないために手洗いなどがおろそかになり,院内感染は頻発してる。本研究では会話中に移動した口腔細菌を培養法で可視化した。二人が10分間会話中に100〜500CFU以上の口腔細菌が飛沫と共に机上に移動した。その内の70〜80%は胸元から12〜13cmの位置にあった。マスクをすると,移動する細菌の90%以上が捕捉された。すなわち,口腔細菌はマスクに移動したことを示している。以上のように口腔細菌は会話中にいろいろな動きをすることが明らかになった。
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.19-30, 2016 (Released:2017-05-10)

アドルフ・ヒトラー (Adolf Hitler)を総統とする国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)について1920年〜1924年にかけて節目となる出来事を中心に観察を試みた。1920年にヒトラーが開いた最初の大衆討議会(meeting rally)では参加者は僅か25人にしか過ぎなかった。ところが,ニュルンベルグにおける第6回ナチ党・全国大会での参加者は8万6000人にも達していたのである。本来,ドイツ国籍ではなかったオーストリア人のヒトラーがナチ党の総統となり,このような興隆期を成就させた要因の中には少なくとも以下の4項目について,ドイツ国民を巧みに扇動することに成功したことにあったと考えられる。(1) 第一次世界大戦の敗因は軍部の共産主義者・社会民主党支持者・ユダヤ人による (2) ヴェルサイユ条約でのドイツへの理不尽な戦争責任賠償 (3) ドイツ経済が不況に陥ったのは政府の政策が間違っていたからである (4) ユダヤ人がドイツ人の職を奪っている。画家志望の青年,ヒトラーが第一次世界大戦でのドイツの敗戦に憎悪したことがナチ党の結党へと結びついた。やがて,ナチ党は第二次世界大戦を勃発させ,全世界で6000万人にも及ぶ犠牲者を生み出すことになる。