- 著者
-
大高 洋平
- 出版者
- 日本転倒予防学会
- 雑誌
- 日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.3, pp.11-20, 2015-03-10 (Released:2015-07-07)
- 参考文献数
- 30
- 被引用文献数
-
13
寿命の延伸とともに,転倒予防はその重要性を増している。高齢者の3人に1人は1年間に一度以上の転倒を経験するとされ,転倒による不慮の事故は,窒息に続き第2位であり交通事故を上回っている。また転倒は,大腿骨近位部骨折をはじめとした高齢者の骨折の主原因であり,要介護の主要な原因の1つでもある。転倒のリスク因子には,本人の特性に関連する内因性リスクと環境などの外因性リスクがある。内因性リスクとしては,バランス障害,筋力低下,視力障害,薬剤などさまざまなものが知られている。転倒予防に最も有効な介入は運動である。運動はグループでも,在宅で個別に指導を行う場合でも有効であり,バランス訓練の要素など複数の訓練要素が含まれているものに効果がある。その他,家屋評価や改修,精神作動薬漸減,頸動脈洞過敏症に対するペースメーカー挿入,初回の白内障手術,家庭医に対する内服処方の指導,包括的なリスク評価に基づいたリスクの修正,などのアプローチで転倒予防効果が報告されている。また,低ビタミンD血症に対するビタミンD補充による転倒予防効果も知られているが,さらなる検証が必要である。今後,エビデンスに基づき実現可能性,継続可能性の高いプログラムを地域の中で実践していくことが望まれる。