著者
坪田 光平
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.75-85, 2011-07-16 (Released:2014-02-07)
参考文献数
26

外国人児童生徒に対する教育支援の制度化は,現代日本において着目される論点の一つである.そして制度化のための検討課題であるボランティアの学校教育への参入とその人材を活用した職業化の構想は,これまで理念的に語られてきた.本論文では,こうした制度構想を批判的に検討するために,意味の変容としてのストラテジーというミクロな見地から,ボランティアが教師との関係構築の局面で編み出したストラテジーを析出し,学校教育現場におけるボランティア定着のプロセスを明らかにした.これまで学校教育においては,専門性の侵害と捉える教師によって,ボランティアは周辺的な地位を与えられてきた.しかし構造的に見落とされがちな外国人の支援ニーズを収集・伝達するなかで教師との関係構築を果たすボランティアは,安価な労働力として使役されないサバイバルな性質に加え,教師の認識にも変化をもたらすペダゴジカルな性質の両輪によって定着を可能としていた.これは一面において,ボランティアの地位確保志向の帰結を意味する.しかし教師との関係構築におけるボランティア行為には,外国人に対する教師の「特別扱いしない」認識枠組みを再検討させ,他の子弟との教育実践を差異化させる点において,ボランティアの主体的行為である〈意味の変容〉機能を指し示すものである.

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