著者
阿部 晃士
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.5-16, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

東日本大震災の被災地である岩手県大船渡市の住民を対象に郵送で実施した,2011年12月と2013年12月のパネル調査データ(有効回答439人)を分析した.地震・津波による被害については,住まいの被害は収入や職業と関連がない一方で,仕事という点ではもともと収入が低い層ほど継続が困難な状況にあったことを確認した.次に,2013年12月時点で自宅を再建できているのは震災前の世帯収入がかなり高い層であること,震災前からの世帯収入の変化には業種・職業による大きな違いがみられることを示した.最後に,意識の点では不安感と生活復興感を取りあげ,2年間に不安感は低下したが生活復興感は変化していないこと,居住形態の効果もあるが,性別や世帯収入の効果が強くなってきたことが明らかになった.また,復興感では,2013年の復興感に対する震災前の世帯収入の効果があった. これらの結果から,震災による住まいへの被害は格差との関連は小さかったが,その後,仕事の継続や住まいの再建といった復興過程に経済的要因による格差が存在したといえる.さらに,震災前の収入が震災2年9カ月後の時点での生活復興感に結びつていることから,震災前の格差が復興過程の格差に,さらに復興における意識の格差にもつながっていると考えられる.

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