著者
冨士田 裕子 菅野 理
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-47, 2020 (Released:2020-07-07)
参考文献数
21

1. 北海道の汽水湖のうち,オホーツク海に面した濤沸湖,北海道東部地方の火散布沼,藻散布沼,トーサムポロ沼で水草の分布状況調査と塩分濃度等の測定を,カヌーを使用して水上から実施し,塩分濃度と出現水草種の関係について考察した.2. トーサムポロ沼ではアマモ,火散布沼,藻散布沼ではアマモとコアマモが出現し,それ以外の種は見られず,測定した塩分濃度は2.61%から3.15%の範囲であった.3. 濤沸湖では,アマモ,コアマモに加え,8種類の水草が出現した.濤沸湖では湖出口から5 km付近までアマモとコアマモが分布しており,さらに湖出口から遠い地点では発見できなかった.両種は,主に塩分濃度が1%以上の場所に出現していたが,コアマモは塩分濃度の低い場所でも生育が確認された.4. 濤沸湖の湖出口から5 km以上離れた場所では,アマモやコアマモ以外の種が出現し,それらは 塩分濃度1%以下の場所で採集され,種によって出現場所の塩分濃度に差異が見られた.本研究で測定した塩分濃度はいずれの種も,既存報告で示された各種類の出現する塩分濃度範囲内にほぼおさまっていた.汽水湖の水草の分布は,塩分濃度との関係が深く,多くの種が生育している汽水湖ほど,塩分濃度の異なる場所が湖内に存在することが示唆された.5. 環境省は日本の汽水湖として56湖沼をあげており,その内の半数に近い23湖沼が北海道に存在している.23湖沼のうち21の湖で過去の調査情報があるが,近年,調査がなされていない.さらに,情報のない湖も存在することから,北海道の汽水湖での定期的なモニタリング調査を実施することが必要と考えられた.

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