著者
松村 俊和 内田 圭 澤田 佳宏
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.193-218, 2014-12-25 (Released:2015-07-03)
参考文献数
225
被引用文献数
2

1. 世界的に生物の生息空間として重要な農地の辺縁部は,土地利用の変化によって急速に生物多様性が減少しつつある.日本の水田畦畔に成立する半自然草原は草原生植物を多く含むが,圃場整備や耕作放棄によって植生は大きく変化しつつある. 2. 本論文は日本の水田畦畔植生に関する知見を生物多様性保全の観点から整理し,生物多様性に影響を与える要因とその保全策および研究の方向性を示すことを目的とする. 3. 1990 年以前,畦畔草原は植生の研究対象としては注目されなかったが,1990 年代に非整備地の畦畔草原の重要性や,圃場整備および耕作放棄の影響が報告された.2000 年以降は保全方法の提案,裾刈り地の種多様性,同一地域内での比較,埋土種子の調査など多様かつ数多くの研究が行われている. 4. 伝統的な景観を維持する棚田やその畦畔は,生物多様性の保全機能,生態的防除機能,環境保全機能を有し,また文化的価値や景観的価値が高い. 5. 水田畦畔での種多様性の維持に関する仮説は,時間的・空間的に大規模な要因から小規模な要因まであり,長期的な歴史など大規模な要因はほとんど検討されていない. 6. 畦畔草原は歴史的に関連の深い周辺の草原から強く影響を受けてきたと考えられ,その植物相の成立の検証には,歴史学の史料,水田景観,花粉,プラントオパール,微粒炭,遺跡の植物遺体などが参考になる.また,全国的な植生調査および生物地理学や集団遺伝学的な手法によって畦畔草原の種組成の成立機構を明らかにできる可能性がある. 7. 畦畔には多様な環境条件や管理方法があるが,これらと植生との対応は未解明な部分が多い.管理との関連では,草刈り頻度や時期についての研究が多くあるものの,草刈り高さなどの草刈り方法と植生との対応はあまり研究されていない. 8. 耕作放棄によって水田の面積は減少し,畦畔草原における種多様性の減少と種組成の変化が急速に起こっている.放棄対策には希少種を多く含む場所(ホットスポット)の抽出,草刈り機械や方法の効率化,外部支援,放牧などがある. 9. 圃場整備によって,畦畔草原では種多様性の低下や外来種の増加など,植生は大きく変化する.この対策として圃場整備の工事段階では表土の再利用,種子供給源の配置,農業土木的方法の改善が,圃場整備後の段階では播種,刈り草の撒き出し,外来種の除去,保全の場としての整備地の活用などがある. 10. 調査・解析方法の課題として,種多様性の比較方法や草原生植物のリストの作成がある. 11. 畦畔草原は現状把握や保全が急務であるため,具体的な調査手法や保全手法の確立に向けた提案を示した.さらに,畦畔草原を含む半自然草原全体の保全の必要性を指摘した.
著者
大橋 春香 星野 義延 大野 啓一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-151, 2007-12-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
60
被引用文献数
13

1. 1990年代以降ニホンジカの生息密度が急激に増加した東京都奥多摩地域において,ニホンジカが増加する前の1980-1985年に植生調査が行われた77スタンドにおいて,1999-2OO4年に追跡調査を行い,植物群落の階層構造,種組成,植物体サイズ型の変化を比較した.  2. 調査地域の冷温帯上部から亜高山帯に成立するシラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計7タイプの植物群落を調査対象とした.  3. 1980-1985年と1999-2004年における植物群落の各階層の高さおよび植被率を比較した結果,全ての植物群落で草本層の高さまたは植被率が減少していた.さらに,森林群落では低木層の植被率が減少する傾向がみられた.  4. 1980-1985年と1999-2004年における総出現種数は471種から397種に減少し,奥多摩地域全体での植物種の多様性が低下していることが示唆された.  5. 1980-1985年から1999-2004年の間に,調査を行った全ての植物群落で種組成の変化が認められた.種組成の入れ替わりはミヤコザサ-シモツケ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集の順に高く,シラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集では低かった.  6. 各植物群落の構成種を植物体サイズによって類型化し,その増減傾向を比較した結果,中型・大型の草本種に減少種が多く,小型の草本種と大型の高木種には増減のない種が多い傾向が全ての植物群落に共通してみられた.  7. スタンドあたりの出現種数はシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計5群落で減少していた.これらの群落では特に中型草本および大型草本のスタンドあたりの出現種数の減少が著しかった.また,森林群落のシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集ではスタンドあたりの低木の出現種数も減少していた.  8. コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集ではスタンドあたりの出現種数に変化がみられなかった.これらの植物群落ではスズタケの優占度の減少量と調査スタンドに新たに加入した種数の間に相関がみられることから,摂食によって種数が減少する一方,スズタケの優占度の低下に伴って新たな種が加入することにより,種数の変化がなかったものと考えられた.
著者
服部 保 栃本 大介 南山 典子 橋本 佳延 藤木 大介 石田 弘明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-42, 2010-06-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
15
被引用文献数
12

1. 宮崎県東諸県郡綾町川中の照葉原生林において,シカの採食による顕著な被害が発生する以前の1988年当時の植生調査資料と激しい被害を受けている2009年現在の植生調査資料とを比較し,照葉原生林の階層構造,種多様性,種組成へのシカの採食の影響を調査した.  2. 階層構造についてはシカの採食によって,第2低木層と草本層の平均植被率がそれぞれ約1/2,1/5に大きく減少した.  3. 階層別の種多様性については全階層と第2低木層において平均照葉樹林構成種数がそれぞれ約3/4,1/2に大きく減少した.  4. 生活形別の種多様性については照葉高木,照葉低木,照葉つる植物,多年生草本において平均種数がそれぞれ2.4種,3.8種,1.2種,2.4種減少した.  5. 減少種数は25種,消失種数は35種,増加種数は6種,新入種数は33種となり種組成は変化した.  6. 他地域から報告されている不嗜好性植物と比較した結果,増加種のうちバリバリノキ,マンリョウ,マムシグサなどの12種が本調査地の不嗜好性植物と認められた.  7. 本調査地の照葉原生林の階層構造,種多様性,種組成はともにシカの採食によって大きな被害を受けており,照葉原生林の保全対策が望まれる.
著者
原 正利
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.137-152, 2006
被引用文献数
3 3

&nbsp;&nbsp;1. 八溝山地,阿武隈山地,北上山地を中心とする関東北部以北の太平洋側地域において,ブナの分布域を水平的,垂直的にカバーするように,54地点に植生調査区(投影面積111.3-1039.2m^2)を設置し,ブナを含む森林群落について,上層木(胸高直径5cm以上)の毎木調査と下層の植生調査を行った.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 各林分における種の存否に基づいたTWINSPANによる第3水準までの植生分類によって,調査林分はA-Eの5林分群に分かれた.A-Dの4林分群は,太平洋側の温帯,特に下部温帯の気候的極相と考えられる自然林であるイヌブナ林やモミ林,あるいはブナ林に広く出現する種を多く含んでいた.一方,E群は日本海型のブナ林と共通する種群を多く含んでいた.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 優占型の点からは,A-Cの3林分群はブナのほかコナラ,アカシデ,イヌブナ,モミなど多様な種の混交した林分が多かった.D・E群は優占種数が少なく,ブナが優占する林分が多かった.<BR>&nbsp;&nbsp;4. A群からE群に至る林分群の配列は,気候傾度に沿ったもので,A群からE群に向かって暖かさの指数WIが低下し,これと並行的に冬期降水量と最深積雪深が増加していた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 地形的には全ての林分群を通じて,尾根や斜面上部に成立した林分が多かった.<BR>&nbsp;&nbsp;6. ブナの個体群については,A群からE群に向かって,1)優占度(胸高断面積の相対値RBA)の増加,2)局所的な個体群密度の増加,3)稚樹や小径木の少ない断続的なサイズ構造から連続的なサイズ構造への変化が認められた.<BR>&nbsp;&nbsp;7. 当地域のブナは本来,温帯域全体にまたがる広い垂直分布域を持ち,上部温帯域において優占林分を形成するだけではなく,下部温帯域においては,混交林の1要素として,密度こそ低いものの広範囲にメタ個体群構造をとりつつ分布していたと考えられる.<BR>&nbsp;&nbsp;8. 低海抜域に低密度で分布するブナ個体群の維持再生機構については未解明な点が多く,保全上からも今後の重要な課題である.
著者
大橋 春香 星野 義延 大野 啓一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-151, 2007
被引用文献数
12

&nbsp;&nbsp;1. 1990年代以降ニホンジカの生息密度が急激に増加した東京都奥多摩地域において,ニホンジカが増加する前の1980-1985年に植生調査が行われた77スタンドにおいて,1999-2OO4年に追跡調査を行い,植物群落の階層構造,種組成,植物体サイズ型の変化を比較した.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 調査地域の冷温帯上部から亜高山帯に成立するシラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計7タイプの植物群落を調査対象とした.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 1980-1985年と1999-2004年における植物群落の各階層の高さおよび植被率を比較した結果,全ての植物群落で草本層の高さまたは植被率が減少していた.さらに,森林群落では低木層の植被率が減少する傾向がみられた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 1980-1985年と1999-2004年における総出現種数は471種から397種に減少し,奥多摩地域全体での植物種の多様性が低下していることが示唆された.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 1980-1985年から1999-2004年の間に,調査を行った全ての植物群落で種組成の変化が認められた.種組成の入れ替わりはミヤコザサ-シモツケ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集の順に高く,シラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集では低かった.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 各植物群落の構成種を植物体サイズによって類型化し,その増減傾向を比較した結果,中型・大型の草本種に減少種が多く,小型の草本種と大型の高木種には増減のない種が多い傾向が全ての植物群落に共通してみられた.<BR>&nbsp;&nbsp;7. スタンドあたりの出現種数はシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計5群落で減少していた.これらの群落では特に中型草本および大型草本のスタンドあたりの出現種数の減少が著しかった.また,森林群落のシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集ではスタンドあたりの低木の出現種数も減少していた.<BR>&nbsp;&nbsp;8. コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集ではスタンドあたりの出現種数に変化がみられなかった.これらの植物群落ではスズタケの優占度の減少量と調査スタンドに新たに加入した種数の間に相関がみられることから,摂食によって種数が減少する一方,スズタケの優占度の低下に伴って新たな種が加入することにより,種数の変化がなかったものと考えられた.
著者
鈴木 伸一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.61-74, 2001
被引用文献数
7

&nbsp;&nbsp;1.日本のコナラ林について植物社会学的な種組成および分布の検討を行った.各地域から報告された既発表文献と筆者らの報告した合計562の植生調査資料を用い,総合常在度表により広域的に比較した.その結果,日本のコナラ林群落を次の9群集にまとめ,イヌシデ-コナラ群団,コナラ-ミズナラオーダー,ブナクラスに位置付けた.1)オニシバリ-コナラ群集,2)ノグルミ-コナラ群集,3)アベマキ-コナラ群集,4)ケネザサ-コナラ群集,5)ケクロモジ-コナラ群集,6)クヌギ-コナラ群集,7)クリ-コナラ群集,8)カシワ-コナラ群集,9)オクチョウジザクラ-コナラ群集 <BR>&nbsp;&nbsp;2.コナラ林は各群集の分布状況から,沿岸地域,西南日本地域,中部内陸地域,東北日本地域および日本海地域の5つの分布型にまとめられることを明らかにした.特に西南日本地域と東北日本地域はほぼフォッサ・マグナを境界とし,植物区系上の境界である牧野線に対応していた.<BR>&nbsp;&nbsp;3.垂直分布では,コナラ林は沿岸低地から海抜1350mまでみられ,2つの分布パタ-ンに大別される.1つはヤブツバキクラス域のみに分布する群集で,自然立地をもたない集約的管理によって形成されてきた二次林である.中国大陸の夏縁性ナラ林との類縁をもつと考えられる.他の1つはヤブツバキラス域から下部ブナクラス域まで分布する群集で,二次林だけでなく自然植生としても存在する.ブナクラスの種群が優勢で,二次林としては下部ブナクラスの夏縁広葉樹自然林に由来すると考えられる.
著者
鳥居 太良 冨士田 裕子
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-97, 2016 (Released:2016-12-25)
参考文献数
41

1. 外来種オニハマダイコンの出現状況と群落の組成を把握することを本研究の目的とし,北海道の6地域の砂質海岸で植生調査を行った.調査は,砂質海岸の後浜から第一砂丘の前面で行った.2. 後浜の中でも汀線に近い打ち上げ帯でオニハマダイコンの出現頻度,優占度が高く,オカヒジキ-オニハマダイコン群落が認められた.さらに内陸側の後浜後部から第一砂丘前面にかけてのハマニンニク帯と呼ばれるゾーンの群落内でもオニハマダイコンは生育していた.3. 十勝の大津海岸の調査区には,オニハマダイコンが出現しなかった.これは,オニハマダイコンがすでにこの地域に定着しているものの,他の地域に比べ出現頻度が低いことから,調査測線上に生育していなかったためと考えられた.
著者
指村 奈穂子 大谷 雅人 古本 良 横川 昌史 澤田 佳宏
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-19, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
26

1. バシクルモンは新潟県,青森県,北海道の海岸に局所分布する希少な植物である.バシクルモンの生育立地特性を考察することを目的として,新潟県の生育地で,143個の方形区を作成し,植生調査を行った.2. バシクルモンは,表面が硬く間隙のほとんどない岩場や,堆砂により埋没する砂丘不安定帯や,暴浪による基盤流失のような強い攪乱を不定期に受ける後浜には生育していなかった.また,他種との競争が激しい,Multiplied dominance ratio (MDR)(群落高と植被率の積)が高い風衝草原などにも,バシクルモンは生育していなかった.3. バシクルモンは,適度な環境ストレス(例えば,風化の進んだ凝灰岩の崖地の群落)や自然攪乱(例えば,砂丘や礫質海岸の安定帯の群落)および人為攪乱(例えば,海浜後背の斜面などの風衝草原)のもとに成立する群落に高頻度で出現した.これらの群落では他種は大きく繁茂できず,MDRが高くならない立地であるが,バシクルモンは長い地下茎で進入し,高い被度で生育できるようである.4. 本研究により,バシクルモンは,地下茎を伸ばせるような基質であり,かつ適度なストレスや攪乱でMDRが抑えられた場所に生育することが明らかになった.
著者
服部 保 南山 典子 小川 靖彦
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.45-61, 2010-12-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
81
被引用文献数
2

1. 万葉集に詠まれている植物,植物群落,立地条件をもとに同じ歌の中の植物間の組合せや植物と立地条件の組合せおよび植物群落を解析し,万葉時代の植生景観について考察した.  2. 万葉集に詠まれている維管束植物種数は145種(1650首),植物群落数は44(235首)であった.  3. 同じ歌の中の植物間の組合せや植物と立地条件の組合せは現存植生の種組成や植物と立地条件の組合せとほとんど矛盾しておらず,万葉集の写実性の高さが確認できた.  4. 「浜」,「里」,「野」,「山」における植生分布は万葉時代も現在も大きな差はなく,田畑,クロマツ林,チガヤ草原,ススキ草原,ヨシ草原,里山林などが当時広がっていたと推定した.万葉集の「山」は,現在使用されている用語でいうと「里山」に該当すると考えられた.  5. 万葉時代の西日本の暖温帯における「奥山」の植生はスギ・ヒノキ個体群と照葉原生林の混生林か,両者が地形的にすみ分けていた樹林と考えられた.「奥山」は,その後人の土地利用によって里山化が進み,万葉時代の「奥山」は現在では里山放置林やスギ・ヒノキの人工林に変化している.  6. 万葉集にもっとも多く詠まれていた植物はススキクラスの植物であった.しかし,「庭」に植栽されているススキクラスの植物を詠んだ歌が多く,その点を考慮すると,万葉集でもっともよく詠まれた植生景観は「庭」の景観であった.
著者
斉藤 修 星野 義延 辻 誠治 菅野 昭
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-96, 2004
被引用文献数
7

&nbsp;&nbsp;1.関東地方のコナラ二次林を対象として,20-26年前に植物社会学的方法で植生調査を行った113プロットの追跡調査を行い,その残存状況,種多様性及び種組成の変化の実態把握と要因解析を行った.<BR>&nbsp;&nbsp;2.追跡調査で残存していたのは113プロット中75プロット(残存率66.4%)であり,コナラ-クヌギ群集39プロット(同60.0%),コナラ-クリ群集36プロット(同75.0%)であった.<BR>&nbsp;&nbsp;3.時間経過に伴う出現種数の変化は両群集とも認められなかったが,管理プロットでは平均出現種数が増加し,非管理プロットでは逆に減少する傾向がみられた.出現種数の変化の要因としては,人為管理の有無及びそれに関連するササ類や常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;4.種組成変化の度合いを示す共通係数は,コナラ-クリ群集の方がコナラ-クヌギ群集よりも有意に高かった.また,管理プロットの方が非管理プロットよりも共通係数が高かった.種組成変化に影響する要因としては,コナラ-クヌギ群集ではプロットが位置する市町村の林野率の変化が,コナラ-クリ群集ではプロットの斜面傾斜角,リター被覆率,常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;5.減少が顕著であった種群には風散布植物が,増加が顕著であった種群には動物散布植物がそれぞれ多く含まれていた.また,主に鳥散布によって周辺から新規加入してきたと考えられる緑化・園芸種が両群集とも有意に増加していた.これらはプロット周辺地域の人口密度の増加が著しいほど,その増加が顕著であった.<BR>&nbsp;&nbsp;6.コナラ二次林の管理にあたっては,地域スケールでの林の立地特性を考慮しつつ,種多様性と種組成変化の長期的なモニタリングを行なっていくことが重要である.
著者
山戸 美智子 江間 薫 武田 義明
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.119-126, 2013

1.近畿地方中部の孤立的に残存している半自然草原を対象に,面積と出現種数の関係,小面積化にともない欠落する種の特性などについて調査を行った.<BR>2.草原生植物の出現種数と草原面積の間には,Gleason(1922)とArrehenius(1921)の両モデルで高い正の相関が認められ,小面積化が半自然草原の種多様性低下に影響を及ぼすことが明らかとなった.<BR>3.面積に対して類似した出現パターンを示す種をまとめ,出現種を4つの種群に整理した.それらは,205000m^2以上の草原に分布が偏るA群,33000m^2以下の草原では欠落傾向を示すB群,1000m^2以下の草原において欠落傾向のあるC群,小面積化にともなう欠落傾向の認められないD群である.<BR>4.小面積化によって欠落傾向の認められた種は,総出現種数の約62%を占めていた.絶滅・絶滅危惧種は,面積の減少にともなう欠落が顕著であり,小面積化による影響を強く受けることがわかった.<BR>5.本調査地のなかで最も大面積を有していた曽爾高原においても,出現種数は総出現種数の約79%であり,地域の種多様性維持には不十分であった.また,錨山や市章山のように小面積であっても,これらの草原にしか出現していない種があることも確認された.<BR>6.半自然草原の保全・復元にあたっては,可能な限り大面積を確保することが重要といえる.さらに,本調査地域全体の種多様性を維持するためには,8カ所すべての草原の保全・復元が必要と考えられた.
著者
澤田 佳宏 津田 智
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-61, 2005
被引用文献数
8

&nbsp;&nbsp;1.日本の暖温帯に成立している海浜植生の主要構成種14種(在来海浜植物11種,外来植物3種)について,海流散布の可能性を評価するために,海水に対する浮遊能力と海水接触後の種子発芽能力に関する実験をおこなった.<BR>&nbsp;&nbsp;2.在来海浜植物のうちコウボウムギ,コウボウシバ,ハマエンドウ,ハマボウフウ,ハマゴウ,ハマニガナ,ネコノシタ,ハマヒルガオの8種は浮遊能力が優れており,また,海水接触後にも発芽が可能であったことから,長期間の海流散布が可能と考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;3.在来海浜植物のうちビロードテンツキは海水にほとんど浮かぼなかったため,海流散布が困難と考えられた.オニシバとケカモノハシは10日から20日程度で沈んだため,短期間であれば海流散布が可能と考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;4.海浜に優占群落をつくる外来種(オオフタバムグラ,コマツヨイグサ,ボウムギ)はいずれも,海水にほとんど浮かばなかったため,海流散布が困難と考えられた.これらの外来種は内陸にも生育が可能であることから,内陸を通じて海浜に侵入するものと考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;5.海浜における個体群の孤立化が進行した場合,「外来種」および「長期間の海流散布が可能な在来海浜植物」は局所絶滅後の再侵入が可能であるが,「長期間の海流散布が困難な在来海浜植物」では再侵入が起こりにくくなると考えられる.このため「長期間の海流散布が困難な在来海浜植物」は各地の海浜植物相から欠落していくおそれがある.
著者
阿部 聖哉 梨本 真 松木 吏弓 竹内 亨 石井 孝
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.103-111, 2005
参考文献数
29
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;1.動物の生息環境として重要な林床植生分布の推定方法を検討するため,秋田駒ヶ岳のイヌワシ行動圏において,植生図と植物社会学的調査資料からGISと統計的手法の一つである分類木を用いて林床ササ被覆度の予測地図を作成することを試みた.<BR>&nbsp;&nbsp;2.林床ササ被覆度は林冠優占種と高い相関のある場合もあったが,コナラ林のように林冠優占種が同じでも様々な被覆度を示す場合があった.<BR>&nbsp;&nbsp;3.分類木を用いて林床ササ被覆度に影響を与える要因を解析した結果,林冠優占種,林冠高,夏至付近の日射量指標が被覆度の判別に寄与する要因であることが明らかになった.得られた分類木の判別正答率は76.3%となり,これをもとにGISによってササ被覆度の予測分布図を作成した.<BR>&nbsp;&nbsp;4.本研究の結果から,林床の光環境を間接的に指標する林冠構造や日射量指標のGISデータを用いて,林床のササ被覆度の予測分布図が作成できることが示唆された.
著者
沖津 進
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.129-139, 1997
参考文献数
32
被引用文献数
9

&nbsp;&nbsp;1.シホテーアリニ山脈北部を西流するアニュイ川流域の森林植生を,主要林冠優占種の変化に着目して,上流部から下流部にかけて300kmに渡ってゴムボートで川下りしながら観察した.アニュイ川流域はこれまで詳しい植生状況がほとんど知られていなかった地域である. <BR>&nbsp;&nbsp;2.林冠優占種に基づいて区分すると,移行帯も含めて以下の4タイプの森林帯が上流から下流に向かって識別できた : グイマツ優占林帯,エゾマツ優占林帯,チョウセンゴヨウ-エゾマツ-トウシラベ林帯,チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林帯.樹木分布の上での大きな特徴はチョウセンゴヨウが広い範囲に渡って量的に多く分布し,最も主要な森林構成種となっていることである. <BR>&nbsp;&nbsp;3.北東アジアの水平分布と対応させると,アニュイ川流域の森林垂直分布の特徴は,水平的には接しているチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林とグイマツ優占林との間に,エゾマツ優占林が割り込んでいることである.このことの背景として,アニュイ川が流れるシホテ-アリニ山脈の西側は地勢的に大陸部の平地から沿岸部の山岳域に移り変わる地域に当たり,大陸部では欠けているエゾマツが現れ出すことが挙げられる. <BR>&nbsp;&nbsp;4.アニュイ川流域の森林分布を北海道の森林分布と比較すると,エゾマツ優占林が共通する以外は,両者はかなり異なり,北海道の方がより複雑である.これは,北海道が海洋性気候の影響を受けていることによるものと推察される. <BR>&nbsp;&nbsp;5.アニュイ川流域のチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林は我が国における最終氷期以来の植生変遷を理解する重要な鍵となるものである. <BR>&nbsp;&nbsp;6.最後に,アニュイ川流域の森林を慎重に保護することの重要性を指摘した.
著者
前迫 ゆり
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.61-67, 2002
参考文献数
42
被引用文献数
5

&nbsp;&nbsp;1.奈良公園平坦部で増加しているシカ個体群により,近年,春日山原始林に対してさまざまな影響が生じていることから,春日山原始林の現状をとくにシカの影響に注目して既存の情報をもとに概観し,今後の春日山原始林保全に向けての問題点の整理を試みた. <BR>&nbsp;&nbsp;2.「奈良のシカ」,「フロラ」,「種組成と森林更新」,「シカによる樹木の選択」,「原始林と草食保護獣の共存に向けて」の5項目について,現状と問題点を概説した.
著者
小林 悟志
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.51-61, 2008
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;1. 本研究は,南九州の30地域について,葉の表皮組織の違いによる判別をもとに,ツブラジイとスダジイおよび雑種の分布を明らかにすることを目的とした.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 従来から行われてきた葉の表皮組織によるシイ類の判別法では,葉の任意の位置で観察されており,スダジイとツブラジイおよび雑種の判別を誤る可能性がある.本研究では,葉の横断面の全体が顕微鏡観察できる位置で観察領域を設定し,葉の表皮組織による判別をより正確なものにした.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 南九州におけるシイ類の垂直分布は,海岸部では全標高域にわたってスダジイが卓越していた.一方,内陸部では,比較的標高の低い地域はツブラジイであるが,標高が高くなるにしたがいスダジイの分布する割合が高くなり,山頂や尾根沿いにはスダジイのみが分布していた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 内陸部の久木野では,スダジイは山頂から尾根部に多く,標高が低くなるにつれて個体数が少なくなる傾向が認められた.一方,ツブラジイは調査区域内のより標高の低い地域に多く,標高が高くなるにつれてその個体数が少なくなる傾向が認められた.また,雑種個体は標高の高低によって分布が偏る傾向は認められず,ツブラジイとスダジイの両種が混生している標高域に多く分布していた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 海岸部と内陸部の2地域で行った雑種個体における葉の表皮組織の1層と2層の割合は,周辺に分布するツブラジイとスダジイの分布状況を反映しており,両種の交雑によるF_1形成,ツブラジイまたはスダジイと雑種との戻し交雑,雑種同士の交雑等,分布域によって異なる交雑様式が進行していると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 堅果の形態は,採集場所ごとに異なっていたが,その形態は葉の表皮組織で判別した両種の母樹の分布状況を反映していた.
著者
服部 保 南山 典子 小川 靖彦
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.45-61, 2010
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;1.&nbsp;万葉集に詠まれている植物,植物群落,立地条件をもとに同じ歌の中の植物間の組合せや植物と立地条件の組合せおよび植物群落を解析し,万葉時代の植生景観について考察した.<BR>&nbsp;&nbsp;2.&nbsp;万葉集に詠まれている維管束植物種数は145種(1650首),植物群落数は44(235首)であった.<BR>&nbsp;&nbsp;3.&nbsp;同じ歌の中の植物間の組合せや植物と立地条件の組合せは現存植生の種組成や植物と立地条件の組合せとほとんど矛盾しておらず,万葉集の写実性の高さが確認できた.<BR>&nbsp;&nbsp;4.&nbsp;「浜」,「里」,「野」,「山」における植生分布は万葉時代も現在も大きな差はなく,田畑,クロマツ林,チガヤ草原,ススキ草原,ヨシ草原,里山林などが当時広がっていたと推定した.万葉集の「山」は,現在使用されている用語でいうと「里山」に該当すると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;5.&nbsp;万葉時代の西日本の暖温帯における「奥山」の植生はスギ・ヒノキ個体群と照葉原生林の混生林か,両者が地形的にすみ分けていた樹林と考えられた.「奥山」は,その後人の土地利用によって里山化が進み,万葉時代の「奥山」は現在では里山放置林やスギ・ヒノキの人工林に変化している.<BR>&nbsp;&nbsp;6.&nbsp;万葉集にもっとも多く詠まれていた植物はススキクラスの植物であった.しかし,「庭」に植栽されているススキクラスの植物を詠んだ歌が多く,その点を考慮すると,万葉集でもっともよく詠まれた植生景観は「庭」の景観であった.
著者
島田 和則 勝木 俊雄 岩本 宏二郎 大中 みちる
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-84, 2014

1.都市近郊林における植物相の現状や変遷を明らかにするために,多摩森林科学園(旧浅川実験林)において,過去に公表されたフロラリスト(草下・小林1953,林ほか1965),と現在のフロラリスト(勝木ほか2010)を比較し,50年間の変遷について分析した.<BR>2.その結果,過去にのみ記録された分類群は164,現在のみは141,両方で記録された分類群は626と,2割弱の分類群は入れ替わったが総出現分類群数は大きくは変わらなかった.<BR>3.過去にのみ記録された種は現在にのみ記録された種より希少種の割合が高く,現在のみの種は過去のみの種より外来種の割合が高く,質的に変化したことがわかった.生活型からみると,高木の増加,多年草の減少,散布型からみると,被食散布型の増加,水散布型の減少が特徴的であった.
著者
杉村 康司 沖津 進
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.113-124, 2002
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;1.茨城県筑波山の森林を対象に,落葉と岩の被覆率の違いに着目して設定した調査地点ごとに林床蘇苔類の分布状況を調査し,上層植生,落葉,岩と蘇苔類の分布様式との関係を総合的に検討した. <BR>&nbsp;&nbsp;2.低山帯の林床に出現する蘇苔類の種類や種数は,高木層まで発違した森林植生であれば,高木層の高さや植被率あるいは森林タイプの違いにより大きく変化することはなかった. <BR>&nbsp;&nbsp;3.落葉の被覆率が低く,岩の被覆率が高い林床では,蘇苔類の出現種数が多かった.逆に落葉の被覆率が高く,岩の被覆率が小さい林床では,出現種数が少なかった. <BR>&nbsp;&nbsp;4.落葉に被われにくい岩は,林床蘇苔類にとって最も重要な生育環境を提供していた.特に大きな岩が存在することが,林床蘇苔類の分布にとって重要な条件となっていた. <BR>&nbsp;&nbsp;5.低山帯における岩上においても,大きな岩では生育形数が増加し,階層構造が複雑化していた. <BR>&nbsp;&nbsp;6.低山帯における林床蘇苔類の種多様性は,岩の分布量,特に大きな岩の分布量により規定されていた.
著者
三上 光一 小池 文人
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-40, 2005
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;1.間接傾度分析により,小笠原諸島母島における木本種の分布特性,および外来木本種と在来木本種の分布域の重複を調べた.<BR>&nbsp;&nbsp;2.82箇所に10×10mのコドラートを設置し,出現種とその立地環境を調査した.出現種を1次変数,立地環境を2次変数とした正準対応分析(CCA)により各コドラートの序列化を行った.CCAによって選択された1軸と2軸によって定義された二次元空間を母島の森林のニッチ空間とし,空間内における主要木本種の出現頻度の分布を明示した.そして,各種の出現頻度分布を基に,ニッチの広さと最大出現頻度,外来種と在来種のニッチ重複度を計算した.<BR>&nbsp;&nbsp;3.母島の植生は標高と接峰面高度が表す大スケールの地形の起伏と,ラプラシアンと微地形が表す小スケールの地形の起伏に強く影響を受けていた.これらの環境要因は全て水分条件と関係する環境要因であり,年降水量が1200mm程度と少ない母島において,水分条件が植生の配置に影響を与える重要な要因となっていると考えられる.<BR>&nbsp;&nbsp;4.母島において,いくつかの高木・亜高木種はほとんどのニッチ空間において高い頻度で分布していた.逆に分布域が狭いのにかかわらず高出現頻度の種は少数であったが,尾根の矮生低木林に分布する低木であった.<BR>&nbsp;&nbsp;5.母島の主要木本種の中で外来種はアカギ,シマグワ,キバンジロウ,ギンネムの4種であった.外来木本種の分布域は,アカギ,キバンジロウは中腹から山頂にかけての島内での湿性な環境に,シマグワ,ギンネムは中腹から海岸域にかけての乾性な環境であった.母島の木本種の中でアカギ,シマグワは分布域が広く,高頻度で出現する種であった.<BR>&nbsp;&nbsp;6.アカギは主要木本種31種中15種,シマグワは7種に対する分布域の重複が顕著であり,在来種への影響が大きいと考えられる.現状では固有種の多い山頂部の低木林において高頻度で出現する外来木本種はいないが,湿性環境を好むアカギとキバンジロウが侵入している事が示された.