著者
富田 啓介
出版者
日本湿地学会
雑誌
湿地研究 (ISSN:21854238)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.51-58, 2021 (Released:2021-05-02)
参考文献数
23

湧水湿地が消滅した後も,湿地植物が土壌中にシードバンクを保持することを実生発芽法によって確認した.愛知県知多半島において,およそ 30-10 年前まで湧水湿地が存在し,湿性草原が成立していた場所 3 カ所と,湿性草原が現在も成立している湧水湿地 1 カ所の土壌を採取してまき出したところ,そのすべてから湿地植物が発芽した.湧水湿地の存在していた場所の土壌からは,トウカイコモウセンゴケ・イヌノハナヒゲ類・ミミカキグサ類・アリノトウグサが多数発芽したが,シラタマホシクサやヌマガヤのような主要な群落構成種を含む,過去に記録のある種の多くは発芽しなかった.現存する湧水湿地の土壌からも,地上部にみられた種の一部のみしか発芽しなかった.より詳細な調査が必要であるものの,湧水湿地に成立する湿性草原(鉱質土壌湿原)の構成種の一部は,地上植生の消滅後も長期間にわたり土壌シードバンクを形成するが,すべての種がそうではない可能性がある.

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消滅した湧水湿地の土壌から発芽した湿地植物。富田 2021(日本語論文、オープンアクセス) https://t.co/d3PbYQf0Vo トウカイコモウセンゴケやアリノトウグサなどは発芽したものの、全ての種が発芽するわけではなく、シラタマホシクサなどは発芽しなかったようです。#論文紹介

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