著者
図子 浩二 高松 薫
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.147-154, 1995-02-01
参考文献数
22
被引用文献数
4 9

本研究では, 跳躍選手や球技選手が必要とするバリスティックな伸張―短縮サイクル運動の遂行能力を高めることに対して, 筋力および瞬発力を高めることが, どのような意味を持つのかについて, 健康な男子体育専攻学生99名を用いて検討した.<BR>バリスティックな伸張一短縮サイクル運動の遂行能力を評価するための指標として, RDJ<SUB>index</SUB>を測定した.また, 筋力を評価するための指標として, スクワット姿勢による最大脚伸展力 (Smax/BW) , 瞬発力を評価する指標として, 垂直跳の跳躍高 (CMJh) をそれぞれ測定した.なお, RDJ<SUB>index</SUB>は, 台高0.3mからのリバウンドドロップジャンプにおける滞空時間 (RDJt<SUB>a</SUB>) から求めた跳躍高を踏切時間 (RDJt<SUB>c</SUB>) で除したものであり, できるだけ短い踏切時間によって高い跳躍高を獲得するための能力を評価するものである.<BR>本研究の結果は次の通りである.<BR>(1) RDJ<SUB>index</SUB>, Smax/BW, CMJhの相互間には, いずれも有意な相関関係が認められたが, 相関係数はあまり高い値ではなかった.このことは, 三つの指標は, いずれも脚の筋力およびパワー発揮に関する特性を表すものであるが, 相互の類似性は必ずしも高くないことを示唆するものである.<BR>(2) RDJ<SUB>index</SUB>を構成する要因であるRDJt<SUB>c</SUB>とRDJt<SUB>a</SUB>との間には, 有意な相関関係は認められなかった.このことは, バリスティックな伸張一短縮サイクル運動の遂行能力が, 運動遂行時間の短縮能力と高い跳躍高の獲得能力の二つの独立した異なる能力によって決定されることを示唆するものである.<BR>(3) RDJt<SUB>a</SUB>とSmax/BW, RDJt<SUB>a</SUB>とCMJhとの間には, いずれも有意な相関関係が認められた.しかし, RDJt<SUB>c</SUB>とSmax/BW, RDJt<SUB>c</SUB>とCMJhとの間には, いずれも有意な相関関係は認められなかった.これらのことは, 筋力や瞬発力は, 高い跳躍高の獲得能力には関係するが, 運動遂行時間の短縮能力には必ずしも関係しないことを示唆するものである.<BR>(4) RDJ<SUB>index</SUB>が同じ値であっても, RDJt<SUB>c</SUB>とRDJt<SUB>a</SUB>には大きな個人差のあることが認められた.このことは, トレーニングの主なねらいが, 高い跳躍高の獲得能力にある者もいれば, 運動遂行時間の短縮能力にある者もいることを示唆するものである.<BR>本研究で明らかにしたバリスティックな伸張―短縮サイクル運動の遂行能力と, 筋力および瞬発力との関係は, 跳躍選手や球技選手などの筋力・パワートレーニング法に関する一つの有用な知見になるものと考えられる.

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こんな論文どうですか? バリスティックな伸張-短縮サイクル運動の遂行能力を決定する要因 -筋力および瞬発力に着目して-(図子 浩二ほか),1995 https://t.co/FiMqD5tSIC
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