著者
細矢 由美子 山邊 陽出代 井上 孝 後藤 讓治
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.631-641, 1999-06-25
参考文献数
28
被引用文献数
3

三姉妹のうちの長女と三女の2名が象牙質形成不全を伴うエナメル質形成不全症である症例について,12年間にわたる口腔管理を行った。初診時の年齢は,長女が7歳2か月,三女が2歳5か月であり,全身的には異常は認められなかった。長女は,初診時に〓〓〓が萌出しており,全体に黄色で,〓〓〓はC4であった。三女は,初診時に〓〓〓が萌出しており,全歯とも象牙質が露出し,黄褐色であり,象牙質面は滑沢であった。姉妹ともに永久歯のエナメル質は菲薄,粗〓であったが硬く,低形成の状態であった。全歯にわたり接触点は認められず歯間空隙が存在し,咬耗がみられた。乳歯および永久歯ともに,増齢に伴い歯髄腔が狭窄もしくは閉鎖した。病理組織所見として,姉妹ともに象牙細管の数が少なく,石灰化の不規則性が観察され,象牙質形成不全が認められた。治療は,萌出直後の全歯にグラスアイオノマー充填を行い,その後コンポジットレジン充填を行った。最終的には乳切歯はコンポジットレジン冠,乳犬歯と乳臼歯は既製金属冠,永久前歯はコンポジットレジン冠を経て硬質レジン被覆冠,永久臼歯は既製金属冠を経て全部鋳造冠で歯冠修復を行った。接着性歯冠修復材の歯質への接着性は低く,修復物の剥離や脱落が頻発した。父親が全歯にわたる重度の形成不全であったことより,本症例は常染色体優性遺伝の象牙質形成不全を伴うエナメル質形成不全症であると思われる。

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