著者
張 野 Lina M. Cardenas 今武 由美子 山邊 陽出代 岩沼 健児 後藤 讓治
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.478-488, 1997-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
37

咬合面小窩裂溝と並んで頬面小窩は齲蝕好発部の一つである.頬面小窩の形態を解明する目的で,ヒト未萌出下顎第一大臼歯20歯を用い,頬面小窩の形態についてSEMによる観察,樹脂包埋の連続研削面について実態顕微鏡による観察および計測を行い,以下の結果が得られた.1)未萌出下顎第一大臼歯20歯中の13歯(65.0%)に18の頬面小窩が観察された.同一個体の左右同名歯に左右対称的に発現する傾向が認められた.2)未萌出下顎第一大臼歯における頬面溝の長さは平均2.5mmであり,頬面小窩はすべて頬面溝の下1/3部に認められた.3)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩開口部の形態は楕円形のものが最も多く,18中の12(66.7%)であった.4)頬面小窩の各計測平均値は,開口部の長径553μm,開口部の幅径189μm,小窩の深さ867μm,小窩底部エナメル質の厚径658μmであった.5)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩の長径と幅径との間,頬面小窩の長径と深さとの間にそれぞれ正の相関関係が認められた(p<0.01).6)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩の形態は,DV型が最も多く,18中の7(38.9%),SV型とSK型がそれぞれ4(22.2%),DK型が3(16.7%)であった.SU型とDU型はなかった.
著者
後藤 讓治 細矢 由美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.447-454, 1985-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
13

頂窩は,1937年,所によって報告された歯牙咬頭部附近のエナメル質に認められる小窩であり,これまで頂窩に関する報告は少ない。本研究においては,10例の咬耗,磨耗の少ない人間永久歯の頂窩49例が観察された。観察は先ず実体顕微鏡によってなされ,次いで超音波洗浄器による洗浄,乾燥後,金蒸着が施され,走査型電子顕微鏡によって観察並びに計測が行われた。また,標本の一部は,頂窩中央部で矢状断され,その側壁部が走査型電子顕微鏡によって観察された。観察の結果,1歯あたり最大9個,最小2個,平均4.9個の頂窩が見られた。頂窩の開口部の形態は,円形(46.9%),楕円形(36.7%)三角形(10.2%),その他(6.1%)に分類された。頂窩の直径は最大0.68mm,最小0.014mmで,平均0.17mmであった。頂窩は,歯牙の咬頭部付近のエナメル質に喇叭状に開口し,エナメル象牙境付近で試験管状に終了する盲管である。また,頂窩の側壁には,側枝状の小孔が開口しているのが観察された。
著者
細矢 由美子 山邊 陽出代 井上 孝 後藤 讓治
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.631-641, 1999-06-25
参考文献数
28
被引用文献数
3

三姉妹のうちの長女と三女の2名が象牙質形成不全を伴うエナメル質形成不全症である症例について,12年間にわたる口腔管理を行った。初診時の年齢は,長女が7歳2か月,三女が2歳5か月であり,全身的には異常は認められなかった。長女は,初診時に〓〓〓が萌出しており,全体に黄色で,〓〓〓はC4であった。三女は,初診時に〓〓〓が萌出しており,全歯とも象牙質が露出し,黄褐色であり,象牙質面は滑沢であった。姉妹ともに永久歯のエナメル質は菲薄,粗〓であったが硬く,低形成の状態であった。全歯にわたり接触点は認められず歯間空隙が存在し,咬耗がみられた。乳歯および永久歯ともに,増齢に伴い歯髄腔が狭窄もしくは閉鎖した。病理組織所見として,姉妹ともに象牙細管の数が少なく,石灰化の不規則性が観察され,象牙質形成不全が認められた。治療は,萌出直後の全歯にグラスアイオノマー充填を行い,その後コンポジットレジン充填を行った。最終的には乳切歯はコンポジットレジン冠,乳犬歯と乳臼歯は既製金属冠,永久前歯はコンポジットレジン冠を経て硬質レジン被覆冠,永久臼歯は既製金属冠を経て全部鋳造冠で歯冠修復を行った。接着性歯冠修復材の歯質への接着性は低く,修復物の剥離や脱落が頻発した。父親が全歯にわたる重度の形成不全であったことより,本症例は常染色体優性遺伝の象牙質形成不全を伴うエナメル質形成不全症であると思われる。