- 著者
-
由井 義通
- 出版者
- The Tohoku Geographical Association
- 雑誌
- 季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.3, pp.143-161, 2003-09-18
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
-
3
7
本研究の目的は, 大都市圏における女性就業者の増加と彼女たちを取り巻く住宅問題から, 地域的背景や社会経済的背景に焦点を当てて都市空間のジェンダー化についてアプローチを試みることである。研究の方法として, 女性向け住宅情報誌に掲載されたマンション購入者の体験談の特徴からシングル女性の住宅購入の実態を解明することにした。<br>マンション購入体験談に掲載された女性たちの特徴は, 30歳代が約3分の2を占めており, 彼女たちの居住地は東京都心部の港区や西部や南部内の最寄り駅からの利便性の高い地域内で購入した人が過半数を占めている。シングル女性による住宅購入は, 女性の社会進出に伴う就業構造の変化などが関連しているとみられ, 大都市特有の現象であるといえる。しかし, マンション購入者が必ずしも高収入を得ているキャリア女性に限られていないのは, その背景に民間の賃貸住宅市場における家賃の割高感, 転居や契約更新の際に感じる契約更新料や敷金・礼金などに対する不満や, 単身者が共通して感じる老後の不安などが影響をもたらしている。また, 豊かな生活を求める傾向の中で, その生活行動の充実を求める場として住居を購入すると思われる。