著者
新井 智 田中 政宏 岡部 信彦 井上 智
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.377-382, 2007-05-20
参考文献数
20

世界保健機関(WHO)の勧告によると、犬の狂犬病は流行している地域の犬の70%にワクチン接種を行うことによって排除または防止できるとされている。近年、Colemanらは米国、メキシコ、マレーシア、インドネシアで報告された犬の狂犬病流行事例を利用した回帰分析の結果から犬の狂犬病流行を阻止できる狂犬病ワクチン接種率の限界値(Pc)の平均的な推定値を39-57%と報告している。しかしながら、上限95%信頼限界でのPcの推定値は55-71%であり、ワクチン接種率が70%の時に96.5%の確率で流行を阻止できるとしている。理論的にはPcが39-57%の場合でも流行の終息が可能と報告されているが、公衆衛生上の観点から流行を長引かせないで被害の拡大を最小限に押さえるためには、狂犬病の発生を的確に発見して流行を迅速に終息させる追加施策が必要になると考えられる。

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