著者
坪井 洋人 飯塚 麻菜 浅島 弘充 住田 孝之
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.77-85, 2013-04-28
参考文献数
23
被引用文献数
4

&nbsp;&nbsp;シェーグレン症候群(SS)は唾液腺炎・涙腺炎を主体とし,様々な自己抗体の出現がみられる自己免疫疾患である.SSでは,種々の自己抗体が検出されるが,SSに特異的な病因抗体はいまだ同定されていない.外分泌腺に発現し,腺分泌に重要な役割を果たすM3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する自己抗体(抗M3R抗体)は,SSにおいて病因となる自己抗体の有力な候補であると考えられ,近年注目されている.我々のグループの研究で,M3Rのすべての細胞外領域(N末端領域,第1,第2,第3細胞外ループ)に対して,抗M3R抗体の抗体価および陽性率は健常人と比較してSS患者で有意に高値であった.またSS患者において,抗M3R抗体はM3Rの細胞外領域に複数のエピトープを有することが明らかとなった.さらにヒト唾液腺(HSG)上皮細胞株を用いて,塩酸セビメリン刺激後の細胞内Ca濃度上昇に対する抗M3R抗体の影響を解析した.抗M3R抗体の細胞内Ca濃度上昇に対する影響は,抗M3R抗体のエピトープにより異なる可能性が示唆された.興味深いことに,M3R第2細胞外ループに対する抗M3R抗体陽性SS患者のIgGと,我々が作成したM3R第2細胞外ループに対するモノクローナル抗体は,ともにHSG細胞内Ca濃度上昇を抑制した.M3R第2細胞外ループに対する抗M3R抗体は,唾液分泌低下に関与する可能性が示唆された.<br> &nbsp;&nbsp;以上の結果より,抗M3R抗体は複数のエピトープを有し,唾液分泌への影響はエピトープにより異なる可能性が示された.抗M3R抗体はSSにおける病因抗体としての可能性のほか,診断マーカーや治療ターゲットとなる可能性も期待される.<br>

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