- 著者
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壱岐 一郎
- 出版者
- 沖縄大学
- 雑誌
- 沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.1-10, 2003-03-31
アメリカにおける01年の9・11事件は20世紀の2度にわたる原爆投下にも等しい世界史的意義をもつ。では,ブッシュ政権下における現地メディアはどもかく,東京メディアは「同時多発テロ」を正しくとらえて報道したか,大きな疑問がある。映像メディアはWTCセンターのツインタワー崩壊の瞬間を繰り返し放映した。ワシントン・ペンタゴンの百倍をこえる放映量であろう。また,02年9月17日,日朝首脳会談当日,NHKは放送の大半を拉致報道に費やした。これらの反復は「公平」で「客観的」だっただろうか。日本を代表する放送が政権の広報局に傾く中で,ニュースとその解説の難しさを痛感せざるをない。テレビが言論機関ではなく政権の広報機関に陥りやすいこと,そこには国益を別にして「民益」を損なう重大な陥穽のあることに気付く。つまるところ,巨大映像メディアは歴史文化の広く深い理解が求められていることを知るべきであろう。