著者
荒木 乳根子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.71-96, 1998-12-25
被引用文献数
3

筆者ら(高齢者処遇研究会, 代表 : 田中荘司)は1997年に全国の介護福祉士を対象に「在宅・施設に於ける高齢者及び障害者の虐待に関する意識と実態調査」を実施した。本論はこの調査で得られた在宅における高齢者虐待事例,91事例について分析したものである。また,具体的事例も記載した。被虐待者は女性に多く,後期高齢者が7割を占め,依存度の高い者が多かった。虐待者は嫁が4割近くを占め,次いで,配偶者,息子,娘であった。被虐待者は一人平均2タイプの虐待を受けており,世話の放棄,身体的虐待,心理的虐待がともに6割近くにみられた。虐待の要因は一概に言えないが,虐待者の「介護疲れ・ストレス」および「過去からの人間関係の不和」が最も大きな要因となっていた。虐待者は虐待に関して「虐待と思っていない」ないし「仕方がない」と考えている場合が多かった。虐待の発見者はホームヘルパーが4割を占め,専門職は解決に向けて虐待者・被虐待者と話し合う,保健福祉サービスの拡充などの努力をしていた。しかし,問題解決は13.2%に止まり,解決途中を含めても半数に満たなかった。今後,在宅介護における介護負担の軽減などが求められる。

言及状況

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@hajimechan2001 広く意識され始めたのは高齢者虐待防止法が施行された2006年前後だと思いますが、1998年の論文に『高齢者虐については最近5、6年間で調査研究が活発化し、研究者、福祉従事者の間で注目され始めたところである』と書かれていたのでその頃から取り組んでいたかもしれません。 https://t.co/W8FdWoYEHY

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