- 著者
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下沢 敦
- 出版者
- 共栄学園短期大学
- 雑誌
- 共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.15-40, 2004
『北条五代記』「関東の乱波智略の事」に登場する容貌魁偉な風摩が率いた一党の性格如何の考察。先ず、原典を引用し、現代語訳文を付した。記事中の「悪盗」の語と、室町時代後期の辞典『節用集』の「悪党」の項から、風摩一党を悪党集団と推定したが、当時乱波と呼ばれた風摩一党を旧来の悪党の語で括るのは疑問である。そこで、検討を加えた結果、当時の乱波と透波は、同一・共通の実体を指し示す語であり、その実体とは悪党であったことなどを推定できた。風摩一党は、戦国大名後北条氏に扶持され、夜間奇襲攻撃中心のゲリラや間諜として、戦国末期社会に文字通り暗躍していたが、風摩一党の智略に関する挿話が、実は、『太平記』にそのまま出ている所から、旧来の悪党集団と本質的に異ならないことを指摘し、風摩一党が夜討に伴う分補・乱補等の略奪行為を本領とした点で、山賊・海賊・強盗と同様の略奪者集団であり、悪党に他ならなかったと結論した。