- 著者
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三上 剛史
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.4, pp.453-473, 1998
- 被引用文献数
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「ポストモダン」とか「複合社会」とか呼ばれる現代社会において, 〈公共性〉はいかなる形で可能となるのか。これまでの公共性概念はハバーマスの「市民的公共性」に代表される近代市民社会の前提--「大きな物語」--に支えられたものであったが, 物語の衰退は公共性概念の曖昧化をも招来せずにはおかない。<BR>そこで, まずハバーマス型の公共性概念の変容を辿り, これを「大きな物語」の衰退に伴う物語の修復と捉え, そこに見られるモダン的要素を取り出したい。その上で, さらに, メルッチに代表される社会運動論の視点からも公共性問題を再考し, メルッチもまたハバーマスとは別の形でのモダン的物語の修復を志向している点を確認する。<BR>このようにして, 公共性論の抱える問題をハバーマスとメルッチに託して検討し, 彼らの到達した観点を批判的に摂取することで, これからのありうべき新たな公共性概念と公共空間の可能性に言及してみたい。<BR>NPO/NGOに代表される新しい「アソシエーション関係」を念頭におきながら, ルーマンの機能主義的視点とベックのリスク社会論を援用しながら, 試論的に論じたい。