著者
小原 久治
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.26-52, 1976-07

この小論は,巨視的分配理論がいかなる基本的な理論構造によって構成されているか,について考察することを目的としている。この考察は,まだ完全に発展した決定的な巨視的分配理論が存在していない現状では,巨視的分配理論の立論の基礎・接近方法・分析方法,さらには,その理論構造・合意および批判,そして,新しい分配理論に対して第1次的接近を行なうための新しい展開,などにあたって役に立つことであると考える。小論においては,その全体を通じて次のような仮定を設ける。まず最初に,国家(ここでは一般政府の意味である。)の経済活動と外国貿易の存在を捨象する。投資支出と国民所得はともに純概念であるものとする。減価償却費と補填投資は同じものとみなしている。貨幣的側面を無視し利子率は一定であり,貨幣の供給は十分に弾力的であるとする。さらに,所得の機能的分配の決定要因に関する分析は定常経済に限定するため,ケインズ派分配理論の動学的分析を説明することは除外しなければならない。

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