- 著者
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田淵 晉也
- 出版者
- 宝塚造形芸術大学
- 雑誌
- 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
- 巻号頁・発行日
- no.15, pp.117-132, 2001
西欧文化圏における個人主義的世界観は消滅する傾向にあり,その後,「全体制」に立脚した世界観が,「危機にある資本主義の時代」である,1910〜45年頃を中心に形成されたと,ルシアン・ゴールドマンをはじめとして,一般に主張されてきた。しかしながら,時期を同じくして出現したアヴァンギャルド芸術の諸形態から見ると,かならずしも,そのような個人主義的世界観が消滅の方向に向かったのではなく,むしろ変貌したと考えられる。それは,ルネッサンス時代の,遠近法による技法によって示されているような,個人を世界の中心に固定させ,不動の位置に凝縮させ,そこから世界を把握することを理想とする世界観から一変して,個人を膨張させ世界に充満させること,つまり,個人を希薄化するが,ボーダレスに拡大するという方向からとらえる,世界観である。それらについて,キュビスム,イタリア未来派,ダダ,シュルレアリスムなどのアヴァンギャルド芸術を検証することで,具体的に示した。