著者
神澤 孝宣
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.20, pp.159-170, 2006

ポケットモンスター(ポケモン)」の爆発的ヒット以来、日本のキャラクターは、国内のみならず海外でも高い評価を受けている。しかし、ここ最近の消費者嗜好の多様化を主な要因として、キャラクター商品の小売市場規模は減少している。消費者のキャラクター消費行動はどのように推移しているのだろうか。特にキャラクターとの関わりの深いマンガ産業とアニメ産業から、また近年注目すべきオタク産業の3分野から、多様化するキャラクターの消費行動を考察する。
著者
川中 美津子
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.129-137, 2000-03-31

本研究のテーマはファッション商品の美的感性を問う場合,従来から服飾の美的感性を問題にしていた服飾美学とは別の,新しい方法論を構築することにある。ファッション商品は「生産者と生活者」という概念の中で成立する服飾活動であるという点において,服飾と明確に違いを示す。ファッション商品の美的感性を問う「ファッション美学」においては,ファッション消費者行動論のエスノグラフィ的分析およびアートグラフィ的分析がキーワードになると考えられる。
著者
松浦 邦男
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.12, pp.51-69, 1998

昭和40年頃から高い彩度の青瓦が日本の都市・農村の住宅に広く使われるようになった。この研究の目的は,このような青い瓦が都市及びその近郊農村の景観にどのようなマイナスの変化をもたらしたかを知り,その規制の考え方を提案することであり,とくに伝統的都市景観をもつ京都市を対象としている。主な内容は,1)漢字としての青と地名としての「あお」の意味,2)日本,中国などの瓦の色の変遷,3)瓦の色と景観に関するアンケート調査,4)景観行政(主に京都市)における屋根色彩の規制,5)青色他の色屋根の規制の考え方,である。
著者
合阪 學
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-22, 2004-03-31

前323年、アレクサンドロス大王がバビロンで没した時、彼の帝国-西方に父祖が築いた「マケドニア王国」に東方での新征服地(「アジアの王国」)を附け加えたもの-の全体を組織する仕事には全く手が着けられていなかった。広大な領上を統治する原則をめぐって、以後、ディアドコイの間で統一主義者と分立主義者が対立しつつ、「帝国の統一」が将軍たちの手で解体される過程が進展する。それはイプソスの戦い(301年)で一応の粘着を見るが、最終的にはクルペディオンの戦い(281年)で、ヘレニズム領域王国の分立が確立するまで継続した。
著者
嶋本 昭三
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-22, 1992-03-31

ヨーロッパの美術の歴史はヒエラルキーへの挑戦の歴史と見ることができる。現代において美術のヒエラルキーに対抗するために生まれたそのひとつにメールアートがある。メールアートは1960年代にコンセプチュアル・アートのシミュレーションとして試みられたことがあり,日本では未だにこれをメールアートであるといっているが,世界で捉えられているメールアートとは,郵便手段を通じて,アートやアートに関する思想をお互いに交流する「コレスポンデンス・アート」のことである。そしてそのメールアート行為が発展する中でネットワークが生まれ,これが大きくなる中で「ネットワーキング」というより新しいジャンルとしてひとり歩きするようになった。ここではネットワーキングの現状とその構造について論じた。
著者
李 春
出版者
宝塚大学
雑誌
宝塚大学紀要 = Bulletin of Takarazuka University (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.91-112, 2023-03-31

中国人の日本留学スタイルは保護者の精神的な支えや経済的な援助をあまり受けられない「放任留学」から保護者の精神的な支え及び経済的な援助を多く受けている「援助留学」へ転換している。通信手段の発達及び保護者の経済力の向上がその転換を促す要因だと考えられる。特に無料SNSは保護者と留学中の子どもとのコミュニケーションの道具となると同時に、大学と保護者の連携にも役に立っている。大学はSNSを通じて教育方針、教育内容、子どもの現状などの様々な情報を保護者と共有しながら、必要に応じて留学生の教育における保護者の協力を求めることができる。保護者との連携は、留学生の主体的な学習力の向上につながる可能性がある。
著者
田淵 晉也
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.15, pp.117-132, 2001

西欧文化圏における個人主義的世界観は消滅する傾向にあり,その後,「全体制」に立脚した世界観が,「危機にある資本主義の時代」である,1910〜45年頃を中心に形成されたと,ルシアン・ゴールドマンをはじめとして,一般に主張されてきた。しかしながら,時期を同じくして出現したアヴァンギャルド芸術の諸形態から見ると,かならずしも,そのような個人主義的世界観が消滅の方向に向かったのではなく,むしろ変貌したと考えられる。それは,ルネッサンス時代の,遠近法による技法によって示されているような,個人を世界の中心に固定させ,不動の位置に凝縮させ,そこから世界を把握することを理想とする世界観から一変して,個人を膨張させ世界に充満させること,つまり,個人を希薄化するが,ボーダレスに拡大するという方向からとらえる,世界観である。それらについて,キュビスム,イタリア未来派,ダダ,シュルレアリスムなどのアヴァンギャルド芸術を検証することで,具体的に示した。
著者
崎田 喜美枝
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-46, 1990-03-20

'60年代にアンドレ・クレージュ(パリ)とマリー・クワント(ロンドン)が発表したミニスカートが,世界中にセンセーションを巻きおこしました。'60年代後半から'70年代には,パンツといえばスポーツウエアやホームウエアだったアイテムが,サンローランがシティパンツを提唱し,あっという間に世界の女性に愛用され,タウンウェアはもちろんフォーマルウェアとして,なくてはならないものになりました。'70年代は,"ウーマンリブ"ということばに象徴されるように,女性が主張する時代でもありました。その流れから,'80年代前半のファッションは,男性と対等意識を表すように,パッドを入れて肩幅を強調したショルダーラインで,メンズスーツのようなテーラードなジャケットを多くのデザイナーが働く女性のために発表し,ワイシャツ,ネクタイ,パンツなどもレディス・ファッションの中で,異和感のないアイテムになりました。'86年,男女雇用均等法が施行されたこともあり,男性のエグゼクティブと同じようなスタイルが台頭し,サッチャー英前首相,クレッソン仏首相,ヒルズ米通商代表など,世界の女性政治家がテレビ,新聞をにぎわすのに代表されるように,あらゆる面で活躍する女性が増えました。'80年代半ばには,ジャンポール・ゴルチェやティエリー・ミュグレーがアンドロジナス(男女両性)ファッションを提唱し,若者たちにすぐに受け入れられましたが,ユニセックスなもの,例えばタキシード,ネクタイ,ハンティング,ビジネスバッグなどのメンズグッズを女性が,またソフトなパンツやシースルーのシャツブラウスを男性が着るなど,一部の若者だけでなく,アダルトな男性,女性にも浸透しました。エグゼクティブとして活躍する女性管理職から新しい女性が育ち,社会進出が定着し,肩ひじ張ったりするのではなく,積極的に仕事をしながらも,おしゃれを忘れない"キャリア・シック"に移行し,知的で洗練された現代女性のエレガンスが,パリ,ニューヨーク,そして日本にも共通するテーマとなりました。アライアをはじめとして,ボディコンシャスで,からだのラインを美しくみせるファッション,またニューヨーク・ファッションに代表される洗練されたコンサバティブなエグゼクティブ・ファッション。'80年末から'90年にかけ,アルマーニやフェレに代表される知的でありながら,女らしいイタリー・ファッションが台頭してきました。その中心となっているのは,19世紀からの伝統あるパリ・オートクチュールとパリ・フレタポルテだともいえます。ファッションが大きく移り変わってゆくことは衆知のことですが,これは単なるファッションの変化だけでなく,社会背景とともに女性の生き方が変り,ライフスタイルも高級志向になりました。食生活が変化し,健康のため,痩身のためのヘルシーメニューをそろえた専門レストランも登場しました。一方,余暇にスポーツをする人も多いのですが,その時間もない多忙なビジネスマンやオフィスレディたちは,会社への生き帰りに,ウォーキング-歩くことで健康不足を解消しようとしている"アーバンハイカー"がニューヨークで出現しました。ゴルバチョフ大統領のペレストロイカ,チェルノブイリ原発事故,オゾン層破壊,ベルリンの壁崩壊,EC統合,大旅行時代,湾岸戦争など,自然環境問題をはじめ,政治,経済,社会,民族文化など,世界の出来事をリアルタイムに,各国で受けとめる今日では,ファッションも世界的な観点から見ることが必要だといえます。"アース'90"と題して環境問題に関心を持つ世界のミュージシャンが,子供の未来を守るコンサートに参加するなど,「自然を愛そう」「地球を大切にしよう」という環境保護-エコロジーがクローズアップされています。その影響を受けて,'90年代はじめのファッションは,エコロジーカラーやアースカラーといった,自然のモチーフや健康であること-スポーツマインドが主役となっています。'90年春夏,'90〜'91秋冬のニューヨーク,ロンドン,マドリッド,ミラノ,パリのプレタポルテ及び,パリオートクチュール・コレクションから,時の流れの中で生活文化や女性の生き方などを,ファッションを通して考察します。
著者
西上 晴雄
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-21, 2005-03-31

現在の私たちはたくさんのマンガとアニメーションの中で生活しており、子どもの時からの蓄積は大きなものがあり、性格形成に強い影響をもたらしています。情報社会の中にあって、それをどう理解したらよいのか、現代社会の中において、圧倒的に受容されている社会メカニズムの関題ともう一方で、私たちの内部、主として脳内メカニズムについて考察し、マンガ・アニメの人気の秘密を分析してみます。マンガ・アニメに表れる大衆ニーズの歴史的変貌、技術的変遷、芸術との関連性は膨大な文化史となり、今日に繋がります。マンガ・アニメを現在だけの流行とはせず、人間性の原点から眺め直すことで、更なる発展が期待できるのではないでしょうか? 現代社会の表層部分、消耗品としての扱いの強いマンガやアニメですが、その正体・構造を探るとき、他に見られない大きなものがこめられていることが分かってきます。
著者
安永 一典
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-56, 1996-03-31

イギリスのヴィクトリア時代,そのデザインは過去のデザイン,即ち古典主義,ゴシック,ルネサンスやロココ等のリバイバルが主たるものであったが,一方ではモダン・デザインの模索がなされるといった混迷の時代でもあった。20世紀に残されたそれらのデザインを,その体験若は如何に考え共存させていたのか。本稿では背景としてヴィクトリア期のデザインを屡々描くアガサ・クリスティの小説の中からそれらを探り,検索を試みたものである。
著者
柳 たかを
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.53-63, 2007-03-31

「画面中央に真っ暗な列車のトンネル。脚立を肩にした男が青赤黄の絵の具の缶と数本の刷毛を手にトンネルに入っ行く。」男はトンネル(未来)の壁に極彩色の壁画(夢・希望・自由)を描きに行くのです。たぶん暗くても誰も壁画を見ることはできない…。これは1987年、第六回読売国際漫画大賞一位のドーシャン・ペトロービッチ氏(ユーゴスラビア)の作品です。ゴルバチョフ率いるソ連が崩壊したのは数年後の1991年。東欧の人々の自由な社会への思いは強烈に伝わってくる作品といえるでしょう。短編小説一冊分に匹敵するメッセージを読み取れるカートゥーンがあります。マンガ文化全盛の日本ですが、その大部分はコミックスに対するものでありカートゥーンは忘れられています。しかしコミックスも一時の勢いを失いつつあると言われており、ならば今一度カートゥーンの可能性について考えるのも無駄ではないでしょう。
著者
吉田 雅子
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.127-141, 1992-03-31

映画が誕生してまもなく100年,トーキーになってから60年以上になる。現在の映画では,映像と音楽は切りはなして考えられない。トーキー以前のサイレント映画の時代でも,音楽と映画は深い関わりを持っていた。以下は,音楽の視点からみたサイレント映画の歴史を,欧米と日本に分けて述べたものである。
著者
合阪 學
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-42, 2006-03-31

アレクサンドロス大王の東征の軍は小アジア、シリア、エジプトを併合してのち、ガウガメラの戦いで勝利を得、その結果、彼はそれまでの「マケドニアの王」に加えて「アジアの王」の称号を帯びた。バビロン、スサ、ベルセポリスの征服ののち、東イランでの遠征では「アジアの王」としての王権とマケドニア軍兵士の伝統がしばしば衝突した。バビロンへ帰還したアレクサンドロスは東方遠征に続いて西方遠征の計画を懐いていて、彼の展望は西地中海全域の征服へとひろがるが、彼の突然の死はその実行を不可能にした。
著者
加藤 力 松田 奈緒子
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.103-115, 2007-03-31

住居のインテリアは、今や、化粧やファッション等に次いで、重要な自己表現手段になっている。また、住居のインテリアは、住み手にとって、自我や自己等の自分の内面を投影する対象として捉えられるようになった。住居のインテリアは、外部からは閉ざされた空間でありながら、それは、常に、他者のまなざしを感じながら、部屋を飾るという空間の自己化の行為といえる。この意味で、インテリアは、社会心理学的な側面を持つ。ここでは、まず、インテリア調査によって、インテリア空間における自己化の過程の中で、他者性の存在について、実証を行った。次いで、自己化の手段や方法、あるいは、その構成や意味についての考察を行った。このことから、インテリアにおける研究領域に関し、従来の領域の他に、社会心理学的研究領域の存在の可能性について言及した。
著者
吉田 浩
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.169-180, 1997-03-31

自然のなかにあるものには必ず「ゆらぎ」が存在する。そのゆらぎのなかで自然の風のゆらぎは「1/fゆらぎ」とよばれ,「フラクタル」構造の特徴である自己相似性を持つ。このゆらぎの数値的シミュレーションをゆれる風鈴を仮想3次元空間で映像化することで実現させると同時にMIDIによる音の制作もゆらぎの数値を用いて行った。この音は映像ともよく合致し,快いものである。この音が風の音すなわち風のフラクタルサウンドである。
著者
長谷川 紘
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-7, 1987-03-25

本学校舎の設計にあたっての理念と経過について,以下に記載した文献の再録の形で報告する。新建築誌において一部割愛された部分は初出である。なお,原設計者アンドレ・ヴォジャンスキー氏の文章も併せて再録する。1.設計の意図するところ(カッレジマネジメント 1987年11月) 2.設計の要点(建設新聞 1987年4月) 3.設計のプロセス(新建築 1987年7月) 4.宝塚造形芸術大学の設計 アンドレ・ヴォジャンスキー氏の寄稿(新建築 1987年7月)
著者
辻 筆雄
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.163-175, 1994-03-31

本稿は,日本の古典文学に表れる色彩表現の実態を時代別に検証することにより,それぞれの時代における日本民族の,色彩に対する意識や感じ方の特徴などについて考察したものである。今回は,前編で述べた奈良時代に続き,主として平安時代を中心にして述べる。
著者
稲次 敏郎
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.35-66, 1994-03-31

「韓国には庭園がない」-一般的にいわれるこの疑問に対して,韓国独自の庭園形式を明確にすることが本稿の内容である。韓国庭園の特徴は,住居との関係において鮮明になることから,住居構成を以下の要因から考察した。1.風水地理説に基づく立地的要因 2.儒教に基づく階級・習俗的要因 3.温突に基づく機能的要因 これら住居構成要因との関係から,庭園の形式と特質を解明したものである。