著者
小形 岳三郎 堀口 尚
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-11, 2000-03

非感染性の肺傷害の多くは, 病理学的にびまん性肺胞傷害と呼ばれる病変をきたす。このびまん性肺胞傷害は肺胞組織の崩壊・炎症に続く持続的な肺線維化を特徴とする。本稿では, 先ず, びまん性肺胞傷害を病理発生的に上皮傷古型と内皮傷古型の2型に分類し, 炎症及び線維化の進展様式に差異のあることを示した。次に, 肺傷害の発生にはオキシダントが深く関与していることを種々の肺傷害について説明した。最後に, びまん性肺胞傷害の特徴である持続性線維化の機序について考察した。(1)肺胞上皮の傷害にもとづく上皮傷古型肺胞傷害は, 硝子膜形成とマクロファージを主体とする溶出性肺胞炎をきたし, その後急速に肺胞の器質化・再構築を起こす。これに対し, 肺胞中隔の毛細血管内皮の傷害にもとづく内皮傷害型肺胞傷害は, 基本的には間質性肺炎をきたすため, 肺胞中隔は次第に線維性肥厚におちいる。内皮障害型の場合には, 更に二次的肺胞上皮傷害が生じる。(2)高酸素による肺傷害は活性酸素よる外因的なオキシダント肺傷害である。 ARDSの際の肺傷害の如く, 系統的に血管内にて白血球が活性化することによって内因的にもオキシダント肺傷害をきたす。また, 化学物質や薬物による肺傷害の場合においても, 二次的に抗酸化機構の破綻によるオキシダント傷害が深く関与する。原因如何にかかわらず, 内皮傷害型にみられる二次的上皮傷害は, 抗酸化機構の破綻によると考えられる。(3)肺傷害の修復に関与する肺胞間質細胞は, マクロファージから放出されるサイトカインにより増殖するとともに, 活性化した肺胞間質細胞はオートクリン機能を獲得することによって自己増殖する。この肺胞間質細胞のオートクリン機能獲得が, 肺傷害後の肺線維化が進行性である理由と解釈される。また, 肺胞間質細胞はレチノイド貯蔵細胞の一つで, その細胞増殖に対してレチノイドは抑制的に働く。

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こんな論文どうですか? <総説>非感染性肺傷害の病理,2000 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000487006 非感染性の肺傷害の多くは, 病理学的にびまん性肺

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