著者
丸山 久美子
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
no.6, pp.141-162, 1994-01

20世紀末今日、地球規模での社会的病理現象が多発し、「病める青年」が増加していると言われる。特に、日本における現代青年は戦後以来、平和のうちに物質的豊かさを満喫し、安眠を貪り、いつのまにか「飽食の時代」の社会的落とし子となり、彼らの背中に世界が抱える大きな重荷が負わされるまでになった。世界の歴史を繙くとき、文明の成熟は、常にこのような「飽食の時代」を招来し、滅び行くという運命的経過を辿っている。漫然とした危機意識や社会不安の潜在的感情が日本の青年のうちにどのような形で形成され、日常生活の中に浸透しているのであろうか。現代の若者を代表すると思われる20才未満の男女大学生の様々な現代の世相を反映する多くの社会病理現象に関する態度や意見を調査し、彼らの危機意識を分析した。その結果、彼らは様々な社会現象にたいして、「自然環境破壊現象(地球の温暖化、オゾン層の破壊、森林伐採における生態系の破壊、複合汚染の拡大など)」、「人的環境汚染(麻薬公害、核施設の故障による放射能漏れ、エイズの蔓延、ホームレス人口の増加など)」、「時代的流行現象(性別越境社会、男女両性具有時代の到来、アルコール中毒患者の広域化(女性、若年)、新興宗教の氾濫、不法就労外国人の増加など)」の3側面からなる危機意識を持ち、男女差が大きいということが理解された。

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