著者
内藤 正典
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.749-766, 1997-11
被引用文献数
1

本稿は山本健見による筆者の著書への批判に反論することを通じて,多民族・多文化の共生をめぐる諸問題に対する研究視角を検討したものである.冷戦体制の崩壊とともに,イスラムとイスラム社会を共産主義に代わる新たな脅威とする言説が西欧諸国に蔓延している.しかし,多くのムスリム移民が定住している西ヨーロッパ諸国において,この言説は多文化の共生を危機に陥れる危険をはらんでいる.宗教や民族の相違が直ちに対立や紛争をもたらすとする言説の問題点とは何であるのか.移民自身からの異議申立ては何を争点としているのか.異文化との共存をめぐるマスメディアの功罪とは何か.そして,移民によって国家の基本原理が問われていることをどのように評価すべきか.本稿では,ドイツにおけるトルコ人移民の問題を通して,これらの課題を検討する際に必要な視角を具体的に提示した.

言及状況

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