- 著者
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山本 健兒
- 出版者
- 学術雑誌目次速報データベース由来
- 雑誌
- 地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.12, pp.775-797, 1997-12-01
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
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ドイツの中で,デュースブルクは,外国人の空間的セグリゲーション度が高い都市の一つに属する.この都市の中でアルト・ブルックハウゼンは,外国人とりわけトルコ人の集中度がひときわ高い街区である.本稿の目的は,このような街区形成の要因を,都市計画の失敗に求め,外国人集中の初期過程を復元することにある.責任ある主体による街区の将来像が提示されないまま,街区取壊しへの不安が, 1970年代前半に住民の間に広まった.そのため,住宅家屋所有者は住宅の質の維持のための投資を怠るようになった.不在家主の中には,老朽家屋を外国人労働者用の寄宿寮として利用した場合もある.この街区最大の住宅所有者たる企業も,住民によって投機的とみられるような賃貸行動をとった.そのため,スラム化が進行していた街区で外国人ゲットー化が進行した.街区のこのような変容は,地域に特有の権力構造のもとでの主体間の社会的相互作用によって帰結したものである.もちろん,より大きな社会経済構造がそれに関与していた.