- 著者
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権丈 善一
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.4, pp.33-53, 2001-10-25
- 被引用文献数
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ここでは,政府は社会保障の財政方式として普通税と目的税のいずれを望み,その望みを実現するためにいかなる政治戦略をとるのかを,政府の意思決定モデルを構築することにより考えてみる。具体的には,国民から人気のある商品を「社会保障」とみたて,不人気な商品を社会保障以外の「他政府サービス」とみたててみる。そして,政府は,これら両方の商品を販売しているのであるが,政府自身は,「社会保障」よりも「他政府サービス」の方をより多く販売したいと思っているとする。さらに,政府は,キャンペーンを行い,国民の選好に影響を与える権力をもっているものとする。この時,政府はどのような政治戦略をとるのか,という問題を設定する。考察の際,政府の意思決定モデルとしてブキャナンの財政選択モデルを参考にする。考察の結果,政府は国民に社会保障の重要性を認識させる政治的キャンペーンを行いながらも,消費税や相続税の福祉目的税化には強く抵抗することが,理論的に予測されることになる。この抵抗の際,政府は,主に,目的税がもつ財政の硬直化問題を理由にあげることになる。しかし,財政の硬直化は,目的税にかぎらず普通税のばあいにも,生じることをわれわれは知っている。そこで,なぜ,財政はいつも硬直化問題をひき起こし,どうして,目的税の方が普通税よりも財政の硬直化が深刻となるのかを,財政方式と政治家の政治力との関係に焦点を当てた政策形成モデルにもとづいて考察する。そしてさらに,目的税が道路のようなストックの供給に用いられるばあいと,社会保障にみられるように,主にフローを賄うのに用いられるのでは,その財政硬直化の弊害の度合いも,随分と異なる可能性があることを論じる。