- 著者
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小林 隆久
- 出版者
- 宇都宮大学
- 雑誌
- 宇都宮大学国際学部研究論集 (ISSN:13420364)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.115-123, 1998-06-30
- 被引用文献数
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E.R.クルチウスによれば、「さかさまの世界」(mundus inversus)というトポスは、ヨーロッパにおいては古代より存在するという。(1)それは文学作品にかぎらず、もっと広く俗謡や絵画などの民衆芸術のなかにも、繰り返し現れている。古代から中世を経て近代に至るまで、幅広く出現したこの「あべこべの世界」 (the world upside-down,topsyturvy world)のイメージは、地理的に見ても、イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、イタリア、ロシア、スカンジナヴイア半島など広範な社会に及んでいる。(2)興味あることには、江戸時代末期の戯作者、鶴屋南北の作品「東海道四谷怪談」や「盟三五大切」にもこの「あべこべの世界」が極めてグロテスクに描かれている。またこれは16世紀のドイツに登場したハンス・ザックスの謝肉祭劇にも見られるが、本論文では、主としてイギリスのエリザベス朝からジェイムス一世の時代にかけて活躍したシェイクスピアとベン・ジョンソンの戯曲を中心にこの問題を考えてみたい。