著者
稲垣 伸一
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.132-122, 1997-12-10

ヘンリー・ジェイムズ『カサマシマ公爵夫人』は、不幸な出生の秘密を持ち自らのアイデンティティーを獲得しようとする主人公の苦悩の物語である。彼の苦悩する姿からは他の登場人物との間で互いが相手を見るという交錯する視線の関係が認められる。そしてその互いの視線によりある種の権力関係と、見る対象のフィクション的要素を読み取ることができる。一方この作品は技法上自然主義的要素と同時に全知の語り手の不在という特徴を持つ。これらは作者が作品内で身をおく位置つまり視点の問題を提示する。本稿では、テーマと形式両面に認められる視線をめぐる問題について検討しながらフィクションと現実認識の関係について考察していきたい。

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これ、読んでみたいな → 「ヘンリー・ジェイムズ『カサマシマ公爵夫人』における視線の力学」 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000990349

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