著者
山中 英明 松本 美鈴
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.20-23, 1995-02-20
被引用文献数
1

スズキの背肉を用い, 洗いによる筋肉の変化を明らかにすることを目的として本研究を行い, 以下の結果を得た。1) 0℃・5分および18℃・3分洗いでは洗い前に比べ, ATPおよび関連化合物総量はやや減少したが, 組成には大きな変化はなかった。2) 49℃・20秒洗いはATPが著しく減少して1μmol/g以下となり, 一方, IMPは著しく増加した。縮みが強く, 透明感はなかったが, 歯切れがよいと判定された。 3) 洗いによってグリコーゲンの分解は著しかった。G6PとF6Pは洗い前後でそれ程差異はみられなかったが, FDPは洗い温度に関係なく約5倍に増加した。乳酸は49℃・20秒洗いで顕著な増加がみられた。すなわち, 49℃洗いでは解糖の進行によって補給されたATPが硬直エネルギーとして使われ, 強い収縮が起きたと考えられる。4) 45℃~50℃の温度帯で20秒間洗いを行ったところ, ATPおよび関連化合物の組成はほぼ一定であり, IMPがその過半を占めた。スズキの湯洗い温度は46℃~47℃が最適であった。5) 18℃・3分洗いを行い, Ca^<2+>およびMg^<2+>イオンの影響を調べたところ, Ca^<2+>洗いではATPの分解とIMPの生成が顕著であった。縮みが強く, 湯洗いと同様な外観であった。一方, Mg^<2+>洗いでは洗い前とほとんど同じで, 縮みはみられなかった。

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