著者
井上 英二 福島 崇志 平井 康丸
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.169-176, 2003-02
被引用文献数
2

従前、周波数解析においては一般的にフーリエ解析が用いられてきた。フーリエ解析では信号を時間領域から周波数領域へ変換し、信号の周波数成分としてどのようなものが存在するかを表現する。そのために時間情報を扱うことができない。しかし、解析対象となる信号の大部分は非定常性を有しているため、時間情報が重要となる。これに対して、ウェーヴレット解析では、信号を時間-周波数の両面からとらえることで局所的な周波数の時間変化を検出することができる。さらに、信号の質を低下することなく、信号を各周波数帯に分解・再構成することができる。すなわち、問題となる周波数帯のみの波形を取り出すことができ、それらの周波数特性を把握することが可能となる。圃場機械に限らず、産業機械全般においては様々な機構が組み合わさっているため、振動波形もより複雑になっている。よって、このウェーヴレット解析を用いることでそれぞれの機構の特性を把握することができる。ウェーヴレットを用いた研究の一例として、陳らは機械設備の異常診断においてウェーヴレットを用い異常識別のための最適周波数帯域の決定方法を提案した。また、片岡らは振動解析においてウェーヴレットの解析性について検討を行い、振動波形の分解能レベルの高さを確認した。本研究では、ウェーヴレットの分解能に注目し、コンバインの代表的な振動源である刈取部と走行部の振動波形のウェーヴレット解析を行い、各機構の有する特長的な振動波形ならびに周波数特性を明らかにすることを目的とした。

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