著者
池田 光男 小浜 朋子 久住 亜津沙 篠田 博之
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-35, 2004-03-01
被引用文献数
5

白内障手術を69歳で受けた筆者の一人を被験者として、物の見え方、携帯電話の見え方、および色の見え方を手術前後で検討した。手術前の物の見え方は、たとえば人の顔が判別できないとか、文章中の文字に分からないものがあるとか、あるいはグレアが嫌であるとかの不具合がはっきり経験された。携帯電話については手術前は画面が明るすぎる、画面のなかの区分けがはっきりしないなどの不具合があったが、手術後にはそれらは消滅した。色の見え方については手術後に青色の物体が目立つとか新鮮とかの驚きはあるが、手術前の不具合としては自覚しなかった。しかし光覚感については手術前はそれが高く、照度レベルの低いところで黒っぽい色つきの物体の色が見えないという不具合が経験された。つぎに色の見え方に関する3つの実験を行った。白内障の左眼と眼内レンズの入った右眼とで同じ色に見える白票の決定、JIS標草色票のシートで同じ色に見える全領域の決定、N8の参照刺激と同じ明るさに見える白票の輝度の測定である。いずれの実験でも白内障の眼では彩度が低下することが示唆された。また白内障眼による見えの色は、明るいところでは、青系が大きく黄方向へ、黄系はわずかに青方向へ移勤し、暗いところでは黄系が大きく青方向へ、青系はわずかに黄方向へ移動した。しかしいずれにおいても赤や緑方向への移動は見られなかった。

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こんな論文どうですか? 一人の高齢者の白内障手術前後における物の見えと色の見えの比較(池田光男ほか),2004 http://id.CiNii.jp/HKVcL

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