著者
篠田 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.94-100, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

主に光学と心理物理学,測色学の観点から色彩の基礎知識を述べる。はじめに色発現の三要素を取り上げて色とは光を媒介に分光情報を反映した知覚であるとし,照明や観察者によって知覚する色が変化することを確認する。次に色覚の三色性を取り上げて分光分布と三属性の関係や三色性に基づく表色系や測色値を紹介する。さらに条件等色という概念を通して三原色を用いた色再現機器の原理と問題点を指摘する。後半は様々な色覚現象を紹介して,そのメカニズムと機能を述べる。最後に色覚分類を説明し,色覚特性や色覚多様性に関連したいくつかのアイディアや応用技術を紹介する。
著者
池田 光男 小浜 朋子 久住 亜津沙 篠田 博之
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-35, 2004-03-01
被引用文献数
5

白内障手術を69歳で受けた筆者の一人を被験者として、物の見え方、携帯電話の見え方、および色の見え方を手術前後で検討した。手術前の物の見え方は、たとえば人の顔が判別できないとか、文章中の文字に分からないものがあるとか、あるいはグレアが嫌であるとかの不具合がはっきり経験された。携帯電話については手術前は画面が明るすぎる、画面のなかの区分けがはっきりしないなどの不具合があったが、手術後にはそれらは消滅した。色の見え方については手術後に青色の物体が目立つとか新鮮とかの驚きはあるが、手術前の不具合としては自覚しなかった。しかし光覚感については手術前はそれが高く、照度レベルの低いところで黒っぽい色つきの物体の色が見えないという不具合が経験された。つぎに色の見え方に関する3つの実験を行った。白内障の左眼と眼内レンズの入った右眼とで同じ色に見える白票の決定、JIS標草色票のシートで同じ色に見える全領域の決定、N8の参照刺激と同じ明るさに見える白票の輝度の測定である。いずれの実験でも白内障の眼では彩度が低下することが示唆された。また白内障眼による見えの色は、明るいところでは、青系が大きく黄方向へ、黄系はわずかに青方向へ移勤し、暗いところでは黄系が大きく青方向へ、青系はわずかに黄方向へ移動した。しかしいずれにおいても赤や緑方向への移動は見られなかった。
著者
森 星豪 岩井 彌 篠田 博之 古来 隆雄
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.35, 2006

オフィス照明において、作業者の集中力を高めかつ省エネ化が期待できる照明方法にタスク&アンビエント(以下、T&A)照明がある。省エネに貢献するT&A照明の普及には省エネだけではなく快適性との両立が必要であり、そのためには明るさ感の低下を必要最小限に抑える技術の開発が不可欠となる。昨年度は明るさ感の低下を抑えるために、輝き感の感じられる発光部(スパークル照明)と壁面輝度を確保する照明機器の試作機を開発し、オフィス空間を想定した小規模な実験室に設置して視環境評価実験および作業性評価実験を実施した。今年度はタスク照明とスパークル照明の他に壁面照明に関してもLEDを用いた試作器を開発し、昨年度の約5倍の広さの実験室に設置して、実オフィスに近い環境にて評価実験を実施した。その結果、スパークル照明有・壁面照明上下方向のLED利用T&A照明は全般照明以上の視環境を実現でき、両者の作業性に差異は見られないことが分かった。
著者
森 星豪 岩井 彌 篠田 博之 森村 潔 芝池 正子
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57, 2005

オフィス照明において作業者の集中力を高めかつ省エネルキ゛ー化が期待できる照明方法にタスク&アンヒ゛エント(以下、T&A)照明があるが、単に周辺のアンヒ゛エント照明の照度を下げただけでは室内の印象が暗く陰鬱に感じられ、明るさ感が低下するという問題があった。省エネルキ゛ーに貢献するT&A照明の普及には省エネルキ゛ーだけではなく快適性との両立が必要であり、そのためには明るさ感の低下を必要最小限に抑える技術の開発が不可欠となる。本稿では本照明方法を実現する照明機器の試作機を開発し、オフィス空間を想定した実験室に設置し(スハ゜ークル照明とタスク照明に関してはLEDを使用)、視環境評価実験を実施した。<BR>実験結果よりLED利用T&A照明にて従来アンヒ゛エント照明と同等レヘ゛ルの視環境を実現できることが分かったが、今回の実験条件では両者の総消費電力がほぼ同等であった。しかし、今回用いたLEDの発光効率は約30lm/Wであり、発光効率が4倍になると20%の消費電力を削減できることより、今回開発したT&A照明は近い将来(2011年にLEDの発光効率が120lm/Wになると予測)、省エネルキ゛ーと快適性との両立が図れる照明方法として期待することができる。今後はよりサイス゛の大きなオフィス空間にてさらなる実用化検討を行う。
著者
池田 光男 篠田 博之
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

人間は3次元空間に生きているから、3次元空間の認識が最重要な大脳の機能であるといえる。しかしよく考えてみると外界の情報はまず網膜で取り入れられるが、外界の網膜像は2次元像になってしまっている。次元ダウンである。大脳はしたがって2次元網膜像を受け取った後それを3次元空間に戻さなければならない。次元アップである。これが通常の大脳機能と考えられる。さて壁に掛けられた絵画を人間が見た場合、その網膜像は2次元像である。上記の論で言えばこれは直ちに3次元空間として認識されるはずである。しかし実際はそうではなく、2次元画像はやはり2次元画像としてしか認識できない。何故か。それは次元アップ機能は絵画が掛けられている空間の方に使われてしまったからである。そこでその空間情報を排除して絵画だけを網膜にインプットすると大脳は当然それを次元アップし、絵画は3次元空間として認識されるはずである。このことをまず大きさの恒常性を利用して証明した。遠方に比叡山が見える場所で写真を撮り、比叡山だけ大きさをいろいろに修正し、実際に見た比叡山の大きさと同じと思う写真を被験者に選ばせた。実際より大きな比叡山の写真を選んだ。つぎに次元アップゴーグルを使用して写真のみが見えるようにして同じ判定をすると修正無しのものを選んだ。写真が次元アップされて大きさの恒常性が働いたと考えればよい。つぎに、夜景の写真を次元アップゴーグルで観測し、光源色に見える明度を測定すると、10以下となった。やはり次元アップがされたので真っ白の物体以下の明度ですでに光源色になったと考えればよい。最後に、ネッカーキューブを次元アップゴーグルで被験者に観測させ、テスト刺激の明度判定を行わせた。次元アップされ3次元の立方体を認識したときのみ現れる明度に被験者は設定した。以上のように、2次元画像でもそれのみを網膜に入力すると、大脳は自動的に3次元空間に変換したことを証明することができた。
著者
山口 秀樹 篠田 博之
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 = JOURNAL OF THE ILLUMINATING ENGINEERING INSTITUTE OF JAPAN (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.266-271, 2007-05-01
参考文献数
11
被引用文献数
13 8

In previous study, we defined the border luminance as space brightness and investigated what determines border luminance in a real environment. We undertook a second study to confirm that perceived brightness of a room is determined solely by border luminance. We also examined the correlation between change in the magnitude of space brightness and change in the border luminance. To investigate these two points, we measured space brightness using three methods: magnitude estimation, space-brightness matching, and border-luminance adjustment. We found that, the border luminance is the same even though the illuminance of the room or the configuration of interior surface reflectance is different, the matched illuminance is the same. The brightness value obtained using the magnitude estimation method was proportional to the 0.56-th power of the border luminance. Our results clearly show that space brightness can be evaluated quantitatively using border luminance adjustment even if the brightness cannot be measured using the horizontal illuminance. Therefore, measuring the border luminance is an effective way to supplement existing photometric systems.
著者
池田 光男 久住 亜津沙 小浜 朋子 篠田 博之
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.113-124, 2003-06-01
被引用文献数
24

高齢者の視覚をシミュレートし、若齢者が高齢者の見る世界を体験するために開発された白内障擬似体験ゴーグルを取り上げ、色票がどのように見えるかを3種類の実験によって検討した。このゴーグルはかずみと色の2種類のフィルターから構成されている。実験1は、ゴーグルありとなしで同じ色に見える色票対の決定であるが、彩度の高い色票はゴーグル着用によって彩度が落ちることが示された。実験2は、JIS標準色票のシートの上でその色の領域を決定するもので、ゴーグルありでは全ての色において色領域が狭くなることが示された。実験3は、無彩色の参照刺激と同じ明るさになる色票の輝度を測定するもので、ゴーグルありでは、なしより高い輝度が必要であることが示された。以上の実験結果で共通して示されたことは、全ての色票において見えの彩度が低下することであったが、その原因は、かすみフィルターによって環境からの白色光が眼内に入り、色票の網膜像の上にかぶさることと推測した。それを確かめる混色実験をし、環境光の照度を上げると色票の彩度は全ての色票において低下することを示した。