著者
塚本 修 佐橋 謙 王 介民
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.925-935, 1995-10-25
被引用文献数
8

周囲を砂漠に囲まれた張掖(Zhangye)オアシスで放射量と乱流フラックスの観測を行ない、地表面熱収支と蒸発散量の季節変化を明らかにした。ここはHEIFEの基本観測点の一つで、オアシスを代表するものである。オアシスは砂漠に比べて植生が豊かなため上向きの短波・長波放射量が小さく結果的に純放射量が大きくなる。また、地表面での熱フラックスは潜熱フラックスが支配的で平均的なボーエン比は0.2程度である。放射フラックスと顕熱潜熱フラックスから地表面熱収支を評価すると地中熱フラックスを考慮しても年間を通じて大きな残差項があり、今後、水平方向の移流を考慮した熱収支を考える必要がある。渦相関法による水蒸気フラックスの値から季節毎に行われた強化観測期間(IOP)期間中の日蒸発散量は3.4mm(8月),1.7mm(10月),0.2mm(12月),2.8mm(5月),3.9mm(6月)という結果が得られた。一方、IOP以外の期間についても蒸発散量を評価するために、2年間の連続した鉛直プロファイルのデータを用いての推定を試みた。安定度の効果と零面変位の変化を導入することによって、渦相関法による値とほぼ一致する結果を得ることができた。これをもとにして張掖オアシスにおける通年の蒸発散量を評価した結果、535mmという値が得られた。これは気象台で蒸発計を用いて得られている年間蒸発量の約4分の1になる。

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