- 著者
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加藤 内蔵進
松本 淳
武田 喬男
塚本 修
- 出版者
- 岡山大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1997
人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/Iの19.35GHzと85.5GHz)に基づき,海上も含めた梅雨前線帯付近の広域降水量分布とその変動を評価するとともに,GNS雲データによる雲量や深い対流雲域の出現頻度,及び全球解析データによる水蒸気収支との関係について冷夏・大雨/猛暑・渇水(1993/1994)年の夏を中心に解析を行ない,次の点が明らかになった。1.1993年には,8月に入っても日本付近で梅雨前線帯に対応する降水域が持続したが,前線帯の位置の違いだけでなく,そこでの総降水量自体が1994年に比べて大変多く,それは,例えば5日雨量100ミリを越える「大雨域」の面積の違いを大きく反映したものである事が明らかになった。2.1993年の夏の多量の降水は,すぐ南の(〜28N)亜熱帯高気圧域からの大きな北向き水蒸気輸送により維持されていたが,日本の南の亜熱帯高気圧域内で〜28Nに近づくにつれて北向きの水蒸気輸送が急激に増大しており,単にグローバルな東アジア域への水蒸気輸送とは別に,亜熱帯高気圧自体の水輸送構造の違いが両年の降水分布の違いに密接に関連している事が明らかになった。3.7〜8月頃の梅雨前線停滞時には,1993年についても,5日雨量で見た広域の「大雨」には深い対流雲群の頻出が大きな寄与をなしていたが,台風が日本海まで北上した時には,大規模場の層状雲域である〜38N以北においても,その南側の対流雲域と同等な「広域の大雨」が見られるなど,冷夏年における梅雨前線と台風の水の再分配過程の興味深い違いが明らかになった。また,いくつかの興味深い事例について,個々の降水系のマルチスケール構造とライフサイクルについても検討を行った。