- 著者
-
島田 多喜子
大谷 基泰
- 出版者
- 日本育種学会
- 雑誌
- 育種學雜誌 (ISSN:05363683)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.212-222, 1988-06-01
日本のコムギ28品種(系統)を含む合計32品種(系統)について葯培養におけるポテト培地の検討をおこない、花粉からの胚状体形成に対する培地の効果、品種間差異、前処理の効果を調査した。一核期の中期から後期の未熟花粉をもつ穂を5℃で7日間処理した後、葯をポテト培地(Potato-2)に置床した。培養1か月で花粉から胚状体が形成され、その頻度は品種によって差があった。農林61号が最も高い胚状体形成率を示し、置床葯当り胚状体を形成した葯は17.1%であった。欧柔、農林12号、ナンブコムギ、Chinese Spring、フクホコムギでも比較的高く、それぞれ、10.9%、6.7%、6.5%、5.1%、5.O%であった。チホクコムギ、エビスコムギ、キタカミコムギでは殆んど胚状体の形成はみられなかった。0から11日間の低温処理後、葯培養した実験では、胚状体形成への低温処理の効果は不安定であった。数品種の葯をポテト培地上で培養した三年間にわたる三回のくりかえし実験の結果から、ポテト培地の有効性は安定であることが分かった。また皮を除いた塊茎をポテト培地の抽出用に用いるより、皮をつけた塊茎を用いる方が、胚状体形成への効果が安定しているようであった。ポテト抽出液の代りに市販のポテトデキストロース寒天培地を19.5g/l添加した培地も有効であった。