著者
大山 莞爾 島田 多喜子 大谷 基泰 森 正之 濱田 達朗 福澤 秀哉
出版者
石川県農業短期大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

ゼニゴケY染色体は、主にその特異的反復配列からなる領域YR1(約4Mb)と、その他の領域YR2(約6Mb)に大別される。YR2はさらにContig-AとContig-Bの2領域に分かれている。YR2のContig-AおよびContig-Bのいずれにおいても100kb当たり1個の頻度で遺伝子が見いだされた。これを常染色体における遺伝子密度と比較するため、まずゼニゴケゲノム全体がコードする遺伝子数を推測した。進化的にゼニゴケに近い陸上植物であるヒメツリガネゴケは約2万5千個、緑藻クラミドモナスは約2万個の遺伝子を有するとされている。従って、ゼニゴケゲノムがコードする遺伝子数は2万〜2万5千と考えるのが妥当であり、その遺伝子密度は100kb当たり7〜9であると予想される。しかし、YR2における遺伝子密度は、偽遺伝子などを含めても100kb当たり2遺伝子である。さらに、ゼニゴケESTの約40%が他生物種由来の配列と相同性を示さないことから、相同性検索によって検出できるゼニゴケ遺伝子の数は全体の60%程度であると考えられる。このことを考慮するとY染色体の遺伝子密度は最大で100kb当たり3程度であり、少なくともYR2における遺伝子密度は常染色体に比べて低いと言える。実際、ヒトY染色体の場合でも常染色体に比べて遺伝子密度が低いことが知られており、Y染色体が遺伝子を失う方向に進化していることを改めて裏付けた。YR2配列について、90%以上の相同性を示す100bp以上の反復配列を検索したどころ、その約75%が反復配列であった。遺伝子はこれらの散在する反復配列の間に存在していた。反復配列の中には、レトロトランスポゾンなどの転移因子や常染色体にも存在するものも含まれていた。これは、ゼニゴケY染色体の進化の過程でY染色体に特異的な反復配列を高度に蓄積していったYR1とは対照的である。
著者
島田 多喜子 大谷 基泰
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.212-222, 1988-06-01

日本のコムギ28品種(系統)を含む合計32品種(系統)について葯培養におけるポテト培地の検討をおこない、花粉からの胚状体形成に対する培地の効果、品種間差異、前処理の効果を調査した。一核期の中期から後期の未熟花粉をもつ穂を5℃で7日間処理した後、葯をポテト培地(Potato-2)に置床した。培養1か月で花粉から胚状体が形成され、その頻度は品種によって差があった。農林61号が最も高い胚状体形成率を示し、置床葯当り胚状体を形成した葯は17.1%であった。欧柔、農林12号、ナンブコムギ、Chinese Spring、フクホコムギでも比較的高く、それぞれ、10.9%、6.7%、6.5%、5.1%、5.O%であった。チホクコムギ、エビスコムギ、キタカミコムギでは殆んど胚状体の形成はみられなかった。0から11日間の低温処理後、葯培養した実験では、胚状体形成への低温処理の効果は不安定であった。数品種の葯をポテト培地上で培養した三年間にわたる三回のくりかえし実験の結果から、ポテト培地の有効性は安定であることが分かった。また皮を除いた塊茎をポテト培地の抽出用に用いるより、皮をつけた塊茎を用いる方が、胚状体形成への効果が安定しているようであった。ポテト抽出液の代りに市販のポテトデキストロース寒天培地を19.5g/l添加した培地も有効であった。